地方議員は職業なのか?

こんばんは。victoria007です。
以前名古屋市議会改革を巡る河村たかし市長と議会との攻防 - Victoriaの日記で読んだ本、

名古屋市議会との攻防に苦戦している河村市長が何を言っていたか、復習するためにもう一度読んでみました。

第4章で、河村たかし名古屋市長(当時は国会議員)と根本良一福島県矢祭町町長が対談をなさっています。

今回は、国会議員はおいといて、地方議員に焦点をあてるため、「第4章 日本に誕生した『ボランティア型議会』」をまとめてみたいと思います。

第4章 日本に誕生した「ボランティア型議会」
<要約>
1 「日当制議員」誕生

福島県矢祭町では2007年の町議会で、議員報酬を廃止し、議会に出た日数に対して「日当」のみが支払われるという制度が可決された。常勤とはいえない議員に生活保障を約束するような高額な報酬は支払わず、生活は議会以外の別の仕事で営み、議会からの招集によって本業を休む場合についてのみ「費用弁償」を支払うという画期的なものだ。

2 「政務調査費」もなし

矢祭町では政務調査費も払っていない。

(最近岐阜県では、政務調査費と政治資金の二重計上が発覚した。
岐阜2県議、経費二重計上 同じ領収書写し使う - Victoriaの日記
政治資金・政調費二重計上さらに3県議 岐阜 請求できぬ領収書も - Victoriaの日記
岐阜・二重計上 自民県連総務会長も 再発行の領収書使う - Victoriaの日記
二重計上 岐阜2市議も 政調費と政治資金「コピー機」「はがき」代 - Victoriaの日記
印象的だったのは、二重計上が発覚した県議が口をそろえて「事務員の単純ミスだ」と言い逃れをしたこと。

根本前町長は、政務調査費に納得がいかないので、県議にいったい何に使うんだと聞いたところ「秘書の給料だ」との答え。その秘書ってのは誰なんだと聞くと「うちの母ちゃんだ」と答えられたという。だから、岐阜県の県議の言うところの「うちの事務員が・・・」っていうのもきっと家族にちがいないと思うがどうだろうか?)

矢祭町では現在議員ひとりに払うお金は年間90万円以上にはならない。日当は議会などの活動があった日のみ、一日3万円を支払うだけである。

3 日当制の導入は議会改革 
 矢祭町では、町の財政難があって、苦渋の英断による歳費削減の一環として日当制を導入したわけではない。町の財政は非常に健全。役場の職員を半分にしたりと改革を進めただけでなく、企業誘致もすすめたおかげで税収がアップ。

日当制の導入は議会改革が大きな目的だった。
実際、日当制導入後の選挙はお金がかからなくてクリーンになった。

以前は、町議選で一票1〜2万円ずつ配っていた。有権者も当然要求してくる。しかし、有権者も年間90万円しかもらえない人にお金を要求することはできない。

また、「子どもを役場に入れてくれ」「特養ホームに入れてくれ」といった「口利き」を頼まれることもなくなった。世間では、議員は身分保障して金に困らないようにしてやればクリーンな政治をすると信じられているがこれは間違い。議員が儲からなくすれば、汚い金が飛び交うこともなくなる。

4 市議の時給が11万円?

ある人が調べたところ、千葉の市議会議員の時給が11万円だったそうだ。日給ではない。議会に出ている時間だけを実働として年間の収入を割るとこういう驚くべき数字が出る。

議員に言わせると議会だけでなく党の仕事などいろいろ忙しいというが、本来そんなものに税金を払う必要はない。

5 なぜ首長は議会改革に手をつけられないのか

ほとんどの首長は議会改革に手をつけようとしない。理由は簡単。選挙の時に地方議員の力を借りているからだ。そこで金を配っていたりしたら議会に対して何も手をつけることはできない。

根本前町長と河村たかし名古屋市長。汚い金を議員に配っていないという点で極めて特殊な共通点のある二人の対談であった。

<感想>
根本前町長は、「国会議員は『政治家』で、地方の首長や地方議員は『政治家ではない』」と言っている。国会議員と地方議員とでは、活動日数や活動の中味が全然違う。地方議員は国会議員に比べれば職業とは呼べない。だから日当制でいいという考えだ。

私も、根本前町長の考えに全面的に賛成である。

今、市議報酬半減案をめぐってリコール騒ぎにまで発展している名古屋市議会でも「議員というのは大変な職業。今だってお金がかかって大変なのに、報酬半減なんてとんでもない」というのが議員のセンセイ方の反対理由として述べられている。

たしかに議員のセンセイ方は忙しい。
今なら小・中学校の入学式に出席しなければならない。
地元の神社で春の例祭があるとなれば朝から正装してかけつけなければならない。
夏に行われる参院選では、兵隊としてかり出される。
たまには有権者をバスの慰安旅行にでも連れ出さなければ、4年たったら忘れ去られてしまうであろう。
情報公開が時代の流れなので、議会報告と選挙活動を兼ねたニュースレターを発行しなければならない。
それに、忘れてはならない。
地元で葬式があったら、たとえ生前会ったことがない人であろうと香典を持ってかけつけなければならない。
なぜなら、そうやって「センセイが出席することで花を添える」ことこそが、有権者から求められる「地元密着型の議員」の姿だからだ。

私は、それらの活動がダメだとは思わない。
どれも大人の社会活動として、意味のあることばかりだ。
だから、大いにやっていただいていいと思う。

問題なのは、それを税金でまかなうという点である。

知り合いのお葬式に持って行く香典も、ニュースレターの印刷代も、いっていみれば議員活動の「営業費」みたいなものだ。そんなものは自分のポケットマネーでまかなってもらわなければ困る。

議員報酬は本来、予算・決算を精査するための活動費として払われているはずだ。
しかし、肝心の本会議で、予算・決算に関して熱い議論が戦わされたという話は聞いたことがない。たいていは、「意義なーし!」でシャンシャンと議決。最近はローカルのケーブルテレビなどで議会中継を流したりするので、有権者対策として、一般質問をする議員は増えた。しかし、彼らにとっては一定の時間、タダでテレビに映るためだけに質問しているのだから、内容はいきあたりばったりである。とっくの昔に答えが出ているような問題を蒸し返してみたり、明らかに地方議会で聞くような内容ではない問題(例えば国防とか君が代とか)に対する私見をとうとうと述べてみたり、全く見るに堪えない。おそらく、あの分厚い予算書を開いて読んだことなんて一回もない議員ばかりのはずだ。開いたってたぶん結果は同じである。膨大な数字の羅列を、一般市民以下の会計の知識しかない議員のセンセイ方に読めるはずもないからだ。

根本前町長はもうおやめになった。
あとは河村たかし名古屋市長がいるのみである。

私は、河村市長には、何としても議会改革を成し遂げていただきたい。

根本前町長の功績は非常に大きい。
大きいが、他の首長が根本前町長と同じことをやらない、あるいはやれないといういい訳がひとつだけある。

「矢祭町は規模が小さいからできたのだ。わが市の規模では無理だ」
というものだ。

もしも名古屋でできたら、そのいい訳は通用しなくなる。

今、全国で若い市長が誕生しているが、若さは強みであると同時に弱みでもある。
政治の世界で未熟であるだけでなく、社会生活全般の経験が浅い。
だから、海千山千のおじさま方に取り込まれれば、ひとたまりもない。

「改革」を旗印にかかげてたくさんの30代の首長が誕生したけれども、情報公開とか比較的取り組みやすい分野で彼らは一定の功績をあげるかもしれないが、大きな意味での行政改革は無理なんじゃないかと思う。なぜなら前例がないからだ。「あんな手があったのか」というお手本がないと経験のない首長が4年間で功績をあげるのは難しいのではないかと思う。

その点、河村たかし名古屋市長は、国会議員としてのキャリアもある。
中小企業の経営者として、1円の商売をした苦労もある。

根本前町長が言っている。
「町長やってよかったと思う日は一日もなかったけど、商売をやっていた時と違うなと一番感じたのは、世の中の職業の中で稼がなくてもいいものほど楽なものはないということだ」

根本前町長と河村たかし名古屋市長は、実家の商売で苦労したという経験も共通していたわけだ。

4年に一度の選挙は確かにきつい。
きついけれども、あれは一騎打ちの闘いを勝ち抜かなければならない首長選挙とはちがう。
言ってみれば、定数20人のところに25人が立候補して、上から20番目までに入ればいいゲームだ。
今の就職難を考えれば、ずいぶんと確率の高いゲームである。

だから有権者は、そんなゆるいゲームに「お金がかかる」なんて泣き言をいう議員のセンセイ方に気をつかう必要はないと思う。

議員報酬で儲けようと考えている職業議員のセンセイよりも、ほかに職業をもってちゃんと生計を成り立たせている人に議員になってもらったほうが、ずっといい仕事をするんじゃないだろうか。

victoria007でした。