風力発電をめぐる論争

鶴田由紀さんというフリーライターが、2010.2「自然と人間」に「風車を拒絶した島、風車に翻弄される島」という、大変興味深いレポートを書いておられます。

書き出しを引用してみます。

>>地球温暖化対策として全国にたてられた1500基あまりの巨大風車。低周波音などの騒音源となり近隣住民の健康に被害を及ぼしている。環境省は2010年4月から4年計画ですべての風車について健康被害の実態を調査することになった。巨大風車は農村の生活そのものにも影響を与えている。<<

そして、風車建設拒絶の島として、長崎県佐世保市宇久島の例があげられています。
要約すると、
>>宇久島では、50基の巨大風車が建つという計画が持ち上がったが、巨大風車が低周波騒音の発生源となることを知った住民が反対運動を行い、佐世保市議会09年度9月議会で市長が「地元とも合意が得られない限り現段階では本計画の実施はなかなか難しいと認識している」と延べた。<<
しかし、事業者はまだあきらめておらず、09年11月に東京大学の学者を引き連れ、「学習懇談会」と称して低周波音について島民を教育し直そうとやってきたということが書かれています。
一方、玄界灘に浮かぶ的山(あづち)大島は、16基の巨大風車が立ち並び、騒音被害を発生させています。

>>当初は村営の宿泊施設に数機を建設して施設内の電気をまかなうという小さな計画だったのが、これといった基幹産業も観光資源もなく、過疎化による農家の後継者不足にも悩んでいたため、風力発電所から年間1億円の固定資産税が入ることに大きな魅力を感じた。議会も満場一致で受け入れを決めた。ところが風力発電所の完成前に村は平戸市と合併し、固定資産税も売電収入もすべて平戸市に入ることになった。<<

村の牛飼い農家によれば、風車が建設されてから、

>>牛の突然死や歩行不全、起立不能、早産などが続いた。風車ができるまで早産はなかった。おそろしくなって牛を減らした。もう牛をやめたい。<<


>>こんなはずじゃなかった。行政に苦情を言っても『金がない。業者がやる』と逃げる。人や牛に影響があるならみんな反対した・・・<<

恐ろしいレポートだと思ったのですが、実は私の地元でも巨大風車がたくさん並んでいます。
山の尾根づたいに並んでおり、昨年の台風の被害で、何基か壊れて止まっているそうですが、修理はできたのかどうか。

毎日、風車を眺めて、そして実際風車の下まで何度も行った経験から、「これは超粗大ゴミになるのでは」ということを懸念しています。設置する時は商売だからどんなにお金がかかっても山にあげて工事するでしょうが、そうそう日常的にメンテができる場所ではありません。しかし、風車をたてようというくらいだから、風当たりはきついわけで、人間の造ったものなんだから、いつかは壊れるでしょう。その時に、採算が合わなければ、業者は修理しないでしょう。電力会社だって、そんな経費はかけないと思う。じゃあ、誘致した自治体は?風力発電に頼るくらいだから、もともと台所は火の車の地方自治体にそんな体力はない。

10年後には、誰も直す気すらない巨大風車の残骸が、むなしく山の頂上にうち捨てられ、さらなる環境破壊をもたらすのではないか。

毎日、山を見るたびにそう憂いています。