名古屋市長選を振り返って 記者座談会

こんにちは。Victoriaです。

さて、河村市長の圧勝に終わった名古屋市長選を振り返って、中日新聞記者座談会が開かれた模様。

http://www.chunichi.co.jp/article/feature/vsshigikai/list/201102/CK2011020902000172.html

 ◆異例の出直し市長選は、河村さんの地滑り的勝利に終わった。
 A 前回の51万票に15万票も上積みするとは思わなかった。昨夏の市議会解散請求(リコール)の署名集め以来、市議会を相手に孤軍奮闘するイメージが定着し、有権者に「応援したい」と思わせたのでは。でも、減税も議員報酬も具体的な中身を把握している人は少なかった。ちなみに本人は、投票率は58%(結果は54%)、得票率を65%(同70%)とみて、67万票を予想していた。

 C 河村さんの当選速報を見ながら、八田さん陣営の幹部が「ありゃ、怪物だ。これから、どうやって立ち向かえばいいのか」と落胆していた。菅政権が揺らぐ中、共産は国政批判票の取り込みも狙ったが、66万票という得票はその思惑をも吹き飛ばした。

 B 石田さんの敗因は、既成政党への逆風と市議会への批判をダブルで浴びたこともあるが、もう一つ。「庶民の味方」を演じて「何やら偉そうな人たち」を相手に戦う姿勢を貫くことで「漠然とした期待感」をがっちりとつなぎとめていた河村さんに、主張を押し流されたという印象だ。陣営は「民主支持者の多くが『民主イコール河村』と思っていたのが敗因」と言うが、有権者の勘違いで片付けられる票差ではない。

 ◆候補者に密着してどうだった。
 A 河村さんは「次の市議選が天王山」との思いが強烈。選挙戦では自分への一票より、住民投票での「賛成」や、市議選で自分が代表を務める減税日本への応援をお願いするシーンが目立った。6日に投票した際は、住民投票の投票箱に向かって手を合わせていたのが印象的だった。

 B 徹底した河村批判を展開した石田さんへの有権者の反応は次第によくなり「河村さん、やりすぎだわ」という声を所々で聞いた。「河村人気もピークを過ぎたか」と感じたが、ふたを開けたら、結果は逆だった。旧態依然とした市役所や市議会の「破壊」こそ、有権者が求めたものだったようにも感じる。河村さんの任期はあと2年。石田さんが「僕の放った矢は確実に刺さった手応えがある。次は必ず仕留められる」と話していた。地方議会改革への熱意は相当なもので、再挑戦もあると感じた。

 C 元参院議員の八田さんは演説もこなれていて有権者へのアピールもうまく、長年の政治経験を随所に感じさせた。演説も河村さん批判一辺倒でなく、暮らしに身近な訴えをした。でも周囲は、どうしても河村さんとの対立構図でとらえてしまい、ある演説会では「テレビのインタビューでは、いつも減税のことばかり聞かれて…」とこぼしていた。

 杉山さんは、奇抜な服装やリヤカーを引いての街宣など、パフォーマンス選挙に偏りがちだった。知名度も低く、組織に頼らないため致し方ない面もあったが、せっかく他候補にはない公共交通政策を提言しながらも、かすんでしまった。

 ◆任期を残して辞職、再出馬した河村さんの戦略が功を奏した。
 A リコール署名からの流れの中で、市議選と市長選が同時にならなかった点だけが河村さんの誤算。住民投票では7割が解散に賛成した。もし市議と市長のダブル選だったら、減税日本過半数を取ったかもしれない。知事選に出た大村秀章さんと一緒に選挙戦をするため、市議選でなく知事選に合わせたのは苦渋の選択だった。

 B 市民税減税などの公約が、議会に反対されて実現しないのは、説得が足りないから。4年の任期の間に実現できるように努力すべきだった。減税にしろ議員報酬にしろ議論の緒に就いたところで辞職したのは残念だ。

 ◆「怪物」の河村さん相手に、各陣営とも河村さんの対抗馬擁立に難航した。

 B たもとを分かった河村さんから徹底的な批判を浴びていた民主市議団は昨夏以降、対抗馬擁立を模索。一度は石田さんに断られ、暗礁に乗り上げた。昨年12月に石田さんが決意するまで、名前が挙がったのは、県選出の参院議員や市幹部、弁護士、ベテラン市議や議長など10人。石田さんも勝算を見いだせず大いに悩んでいた。

 C 共産党などでつくる革新市政の会は1月初め、幹部が石田さんと直談判し、相乗りも検討していた。政策や運動方法での違いもあり、反河村で全て一つにまとまることには難しさがあった。ただ相乗りが実現しても、既成政党と河村さんとの対決がより鮮明になるだけで、有利に戦えたかは分からない。

 市議会の一人会派だった杉山さんは、昨年11月の河村さんの辞職、再出馬表明にすぐに反発して名乗りを上げた。だが反河村候補として杉山さんが立つ理由は乏しい。次の市議選狙いとのうわさが絶えないのもこうした経緯からだ。

 ◆圧倒的民意を受けた形の第2次河村市政への注文は。

 B 河村さんも就任会見で話していたけど、再選でより重い責任を負った。「民主主義を名古屋の名物にする」のもいいが、景気雇用対策や福祉政策などの地道な行政課題の解決に、持ち前の突破力を生かしてほしい。

 A 出直し市議選で河村さん与党が多数を占める市議会が誕生するかもしれない。河村さんは何でも思い通りに進められるようになる。国会議員時代から野党の経験しかなく、市長になっても市議会との関係から本人の心情は野党だったと思う。権力を一手に握ったとき、どう振る舞うかで真価が問われる。

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 座談会は池田千晶市政キャップの司会で、名古屋市長選取材を担当した宮本隆彦、北島忠輔、加藤弘二が行いました。<<

Victoriaでした。