ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part 4 (15) 女を媒介とした異文化交流

こんにちは。Victoriaです。


2012年7月14日、京都大学百周年時計台記念館で開催された、
ライフネット生命保険の出口社長による「5000年史 Part4 11、12世紀の世界」の講義録、
今回は、「十字軍結成前夜 女を媒介とした異文化交流」。

引き続き、
十字軍結成直前のヨーロッパをみております。






1064年、アキテーヌ・ノルマン連合軍がスペインのサラゴーサに侵入。
サラゴーサは、1031年にコルドバを首都とした後ウマイヤ朝が崩壊した後、
イベリア半島に建国されたタイファのひとつ。
タイファとは、アラビア語で「分立している集団」を意味し、
イベリア半島にかつて存在したイスラム教諸王国を指す。







さて、
異民族間で戦争があって、
征服した、されたという騒ぎがあると、
必ず異文化交流が起こるのが歴史の常。







今回も、
イスラム教文化とキリスト教文化の間で、
非常に興味深い文化交流が行われた。









交流の目玉は、
ズバリ、









女。









イスラムというのは、
詩が盛んで、
歌が大好きなお国柄。








クルアーンコーラン)も、もともと読まれる言葉を想定して書かれたもので、
声に出して歌うものだったから、









王様は、
キレイな女性をたくさん周りにはべらせ、
キレイな歌声で歌わせていた。








さて、
そんな優雅な宮廷が、
異民族に襲われ、
雲行きがあやしくなってきて、
王様たちご一行様がすたこらさっさと逃げ出した後、
ポツンと残されたのが、
現地から調達されたキレイな女性たち。








これも昔から歴史の常だが、
異民族間で戦争があり、
征服した、されたという騒ぎがあると、
征服した側の王様というのは、
征服された側の国中のキレイどころを、
宮廷に好きなだけ集め、
酒池肉林の限りを尽くすことができた。








イスラムの宮廷に集められていた現地調達の女たちのことを「キャーン」と言うが、
宮廷に取り残されたキャーンを見て、
キリスト教徒たちはどうしたか?








殺す?









こんな絶世の美女たちを?









いやいや、それはありえないでしょう、









これも戦利品の一部としてちょうだいしようよ!









ということで、
時代の流れに翻弄され、
イスラムの王様に囲われていた彼女たち、
今度はキリスト教世界の男たちの傷ついた心を歌で癒やす歌姫となる。








古来、
女が生き抜くためには、
強い男の庇護が必要で、
強い男に見初められるためには、

  1. 美貌
  2. 歌・踊りの才能
  3. 強い男の子ども(できれば男の子)を産む

のどれかの条件を満たす必要があったという歴史の法則が、
ここでも証明された。









さて、
キャーンたちがどういう歌を歌っていたかというと、
ムワッシャフというアラビア語の叙情詩、
それからハルチャというロマンス語ラテン語起源の言語)の短詩などであった。








彼女たちは、あくまで「現地調達組」なので、
アラビア語はしゃべれない。
短い歌くらいならなんとかなったかもしれないけど、
世界一難しいとの異名もとるアラビア語を、
成人してしまった彼女らに一から教えるのはメンドー。
それに、
キレイな女性にはお勉強なんかよりももっとほかの分野で才能を発揮してもらいたいよね・・・
ということで、
彼女ら自身の言語でも歌わせていたようである。









そんな彼女らが再度拉致され、
キリスト教世界に持ち込んだのが、







吟遊詩人の始まり。







トゥルバドゥールという吟遊詩人たちは、
おもに宮廷愛を歌いながら、各地を遍歴した。








のちに、
十字軍を主題とする歌も歌い、
中世の騎士道のもととなる精神を示したのも彼らである。








・・・ということで、本日の結論 :




吟遊詩人について調べていたら、日本史では琵琶法師が一種の吟遊詩人だってあったんだけど、イスラムの吟遊詩人たちがロマンチックな愛の歌のプロフェッショナルなのに対し、琵琶法師は平家の怨念を歌ったっていうイメージ。なんか、愛の歌のジャンルで日本が一歩も二歩も出遅れてる感じがしてくやしい・・・








Victoriaでした。


・・・
ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part 4 バックナンバーはこちら。
ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part 4 (1) 京都大学百周年時計台記念館 - Victoriaの日記
ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part 4 (2) 唐宋革命 - Victoriaの日記
ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part 4 (3) 中国でてん足が広まった理由 - Victoriaの日記
ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part 4 (4) お金で平和を買うODAだったせん淵の盟 - Victoriaの日記
ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part 4 (5) 行革の天才 王安石 - Victoriaの日記
ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part 4 (6) ガズナ朝マフムードのインド侵入 - Victoriaの日記
ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part 4 (7) チョーラ朝ラージェンドラ1世のシュリーヴィジャヤ遠征 - Victoriaの日記
ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part 4 (8) セルジューク朝 - Victoriaの日記
ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part 4 (9) ムラービト朝 - Victoriaの日記
ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part 4 (10) セルジューク朝の内紛と十字軍の発端 - Victoriaの日記
ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part 4 (11) ウマイヤ朝の滅亡 - Victoriaの日記
ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part 4 (12) 神格化されたファーティマ朝ハーキムの謎 - Victoriaの日記
ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part 4 (13) 王朝の盛衰 - Victoriaの日記
ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part 4 (14) 東西教会の大シスマ - Victoriaの日記
ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ バックナンバーはこちら。
ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ (20)総集編 - Victoriaの日記
ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ 続編 (25) 総集編 AD元年〜500年の世界 - Victoriaの日記
ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part 3 (34) 総集編 - Victoriaの日記
ライフネット生命 会社訪問記 - Victoriaの日記
生命保険