寂聴 今昔物語

単行本が出たのは1999年なのですが、出てすぐ初版で買いました。
今昔物語は高校の古文の教科書にも出てくるし、何かの参考になれば、と思って買ったのですが、これが、予想外におもしろかった!ただ、「これおもしろいよ」といって、高校生にすすめるわけにはいかないので、今まで本棚の隅に眠っていました。

学校の教科書に出てくる今昔物語って、けっこうまじめな話が多いんですよね、当たり前ですけど。
仏様の功徳を説く、みたいな話ばっかりでしょう。

ところが、ホントの今昔物語はちがうんです。
たとえば、この本の中に
大江山で妻を寝取られた男」
という話が出てきます。
あらすじは、題名どおりで、大江山で妻を寝取られた男の話なんですけど、寝取られる状況がすごいんですよ。

妻を馬にのせ、自分は矢を背負って大江山を歩いていると、途中で若い男に出会う。最初は二人なごやかに話をしながら並んで歩き、男は若い男に自分の矢をあげたりなんかしている。
その間、馬にのっている妻は顔を布で隠しているので若い男には見えない。
で、なごやかに談笑していたはずが、どういうわけか、いきなり若い男がさっきもらった弓で男をおどし、縄でぐるぐると縛ってしまう。そこで若い男はおびえている妻の顔をはじめて見ると、あまりにも美しかったので我を忘れ、その場で女を全裸にして(!)自分も服を脱ぎ捨てて、犯してしまう。女は最初は恐怖で声も出なかったが、次第に我を忘れ、最後には耐えきれない叫び声が漏れるのをこらえようともしない・・・。
その間、夫は蒼白な顔を伏せもせず、魂の抜けたような顔で目の前の動きを見ている。
若い男は「よかったぞ。おまえの夫は殺さないで見逃してやる」といって、妻の乗っていた馬に跳び乗って去ってしまった。

というお話。
妻は、「おまえさんという人は何という甲斐性なしだろう」といいながら、夫の縄を解いてやった、というところで話は終わる。

今昔物語は12世紀初めに書かれたわけですから、たぶん、その時代の人は字が読めなかったから、おもに語り伝えられたと思うんです。この話を、どういうふうに語っていたのかな〜と思って。数ある物語の中で、きっと一番人気だったんじゃなかろうか。

すごい筋書きですよね〜。日本人て昔っからものすごいエンターテインメントのレベルの高い民族だったんだなと思って、なんか感心しちゃった。

古典文学っていうと、なんか、小難しい話をいっぱいならべて解説するっていうイメージだけど、ほんとはこんなにおもしろいんだ。源氏物語も教科書にのってるのは、最もおもしろくない部分で、ほんとはすっごいどろどろでおもしろいんですよね。特に紫の上がしっとに苦しむところなんか、まさに昼メロだし。

宇治十帖の筋書きもすごいですよね。
これも寂聴さんの本を読んではじめて知ったんですけど

二人の男性の板挟みになって苦しむヒロインが、最後は自殺を図り、死にきれなくて助けられるんだけど、なんと記憶喪失になっていて、男がそれと知らずにたずねてきても追い返してしまうっていう話。1000年前に、記憶喪失の話なんて、すごいなー、と思って。

寂聴さんの源氏物語は、読もうと思って全部買ってある。

源氏物語(全10巻セット) (講談社文庫)

源氏物語(全10巻セット) (講談社文庫)

もののはずみで簿記論の勉強なんか始めちゃってとても読む時間なくなったんで、これも本棚の奥のほうで眠ってます。こうなったら、オーディオブックでも買おうかな。
瀬戸内寂聴訳「声にして楽しむ源氏物語」

瀬戸内寂聴訳「声にして楽しむ源氏物語」

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