今週のお題 : 雪の日の思い出

雪の日の思い出といえば、命拾いした強烈な思い出があります。
私は、車の運転が下手で、ついに運転をやめて今はどこへいくにもママチャリなんですけど、これは、免許を取ったばかりの年の冬のことです。

免許とりたての頃から、運転が下手な兆候は出ていたのだけど、まだ、「練習すればうまくなる」と信じていたので、休みとなればロードマップを見ながら遠出をしていました。行く先々でトラブルを起こしていましたが、スピードを出すのがこわくてのろのろ運転だったので、大事には至らず。

その日はたしかお正月の松の内が開けるころだったと思うんですけど、田舎のほうの神社に行こうと思いたったんですね。たぶん、お正月なので何かのふるまいがあったのだろうと思います。で、そこははじめてだったんだけど、ひとりでドライブがてら行こうとしたのです。

そこに行くには峠を越えなければなりませんでした。標高600〜700メートルはある山を越えて行くのです。坂がすごい大変で、歩いて上ってるわけじゃないのに運転しながらあせびっしょりになりました。
それが、上るにしたがってなんか雪が積もっているんですよ。晴れてても冬の山の上は雪降ってるって、知らなかったんですね。どんどん道はくねくね曲がって狭くなるし、道路には雪が積もっててそれは深くなってくるし、引き返すにも引き返せなくって、途中で車止まっちゃって。止まったって言うか、あまりにもこわくて、アクセル踏めなくなっちゃったんですよ。今ならケータイで救助を呼ぶけど、その頃はまだケータイ持ってなかったなあ。たぶん、もう半分泣いてたと思う。

そしたら、「ファンファン!」ってクラクションの音がしたんです。
あわててドアを開けたら、ちゃーんとチェーンした四駆の車が止まってました。中から、しっかり防寒具を来た男の人が出てきて、
「どうされましたか?」
ってすごくていねいに聞いてくれるんです。
どう答えたかよく覚えてないんですけど、とにかく「雪だって知らずに上ってきてどうしていいかわからない」という状況は伝わったみたいで、その男の人は、落ち着いて説明してくれました。

「私はこの道はよく知ってます。ちゃんと降り口まで先導してあげるからついてきてください。エンジンブレーキって知ってますか?むりにハンドルきったりしないで、ゆっくりついてくればいいです。ちゃんと私の車の後ろを見てついてくるんですよ」

それで、ものすごくゆっくりと2台の車は降り始めました。前の車の轍にそっていけば落ちないことがわかったので、もう必死。あんなに目をしっかり見開いて何かを必死に見たのって、はじめてだったかもしれない。

何分くらいたったかわからないけれど、突然雪が消えた!細い道が終わって普通の県道に合流する地点に出た。急に視界が広がって何か別世界に来たようだった。

前の車のおじさんは、もう一度「ファンファン!」ってクラクションを鳴らすと反対側の車線に入って、そのまま車の波にのまれて見えなくなりました。

命の恩人なのに、どんな顔のおじさんだったかも覚えてない。毛糸のキャップかぶってたし、半泣きだったからきっとちゃんとおじさんの顔を見るなんてしてないと思う。

今でも冬になって山に雪が降ると、必ずあの親切なおじさんのことを思い出します。ちゃんとお礼も言えなかったけど、本当にあのとき見つけてもらってよかった。もしもあのおじさんが通りかからなければ、あのまま雪道でスリップして今頃私はこの世にいないかもしれなかった。

あの雪道で、感謝という言葉の意味を知りました。

そして、あの日以来、車の遠出をやめました。
人間、練習してもできないこともあるさっていうことを、あの日知りました。お金っていうのは、ぜいたくするために使うっていうのもあるけど、人様に迷惑をかけないために使うっていう意味もあるんですよね。

今は、雪がふったらタクシーにのります。
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