伊関友伸著「地域医療 再生への処方箋」 第4章 夕張希望の杜の地域医療再生 (2)

地域医療 ~再生への処方箋~

地域医療 ~再生への処方箋~

第4章 夕張希望の杜の地域医療再生(2)

2 公設民営方式による医療の再建

(1)村上医師の招へい
2006年8月、筆者は医療の継続を目指すことを第一の目的とし、「公設民営」による医療機関の運営を提案。しかし、夕張市の医療を引き受けようという医療機関は現れない。

そのような中で、たまたま村上医師からメールをもらい、「村上医師にお願いできないか」と直感した。村上医師からはすぐ了解を得た。夕張市は「病院」の存続にこだわったが、診療所へのダウンサイズを決断。村上医師は政策投資銀行や地元の銀行から1億円の借金をし、医療法人「夕張希望の杜」を設立した。

(2)「夕張希望の杜」の医師招へい策

夕張の医療再生で最も重要なポイントは、医師の招へいをいかに図るかということだった。

村上医師は、広く全国から医師を公募することを提案した。一生夕張に骨を埋めるのではなく、2〜3年しっかり地域医療を体験し、また都会に帰って行くのでかまわない。医師がへき地で仕事をすることについて重荷を感じず、気軽に出来る態勢が、医師を地方に招へいできることにつながるのではないかという考えだった。

夕張市立総合病院の末期は、2人の医師で、入院と外来と救急と透析の業務を行っていた。その上宿直もこなさなければならない。このような過酷な勤務の病院に医師は誰も勤務しない。

夕張希望の杜は、医療のダウンサイズをし、行う医療を明確にした。高齢者を中心に「総合診療」「予防医療」「在宅診療」を中心とした医療を学ぶことができる場所ということを明確にした。本格的な高齢化社会の到来に対応して、臓器別ではなく人間としての高齢者の健康のすべてを診る総合医療を学べる場というコンセプトを呈示し、医療機関としての魅力を高めた。

報酬も重要であるが、医師はお金だけでは動かない。夕張希望の杜は医師のやりがいを重視した医療機関となることを目指した。

現在、夕張希望の杜に勤務する医師は5人で、医師の招へいに困らない法人となっている。
(この続きは明日まとめます)

第4章 夕張希望の杜の地域医療再生(1)はこちらをご覧ください。

伊関友伸著「地域医療 再生への処方箋」 第4章 夕張希望の杜の地域医療再生 (1) - Victoriaの日記