堀江邦夫 原発ジプシー  (4) 形だけの放射線管理教育

こんにちは。Victoriaです。

原発ジプシー 増補改訂版 ―被曝下請け労働者の記録

原発ジプシー 増補改訂版 ―被曝下請け労働者の記録

今回は、第1章 美浜発電所 より、 形だけの放射線管理教育 のまとめをお送りします。




<計画線量の無計画>

二次系での”ネッコー”作業が終わり、いよいよ一次系での作業に入った。
一次系とは、管理区域内作業のこと。
防護服に身をつつみ、アラーム・メーターとポケット線量計を携帯しなければならない。


管理区域内作業に先立って、放射線管理教育、通称、放管教育があった。

元請け会社の若い放管(放射線管理者)がやってきて、上下巻に分かれた、それぞれ20分ほどの八ミリを見せられた。

原子力発電所のしくみについて見ていきましょう」という上巻に続き、
「管理区域内での注意事項について」という下巻を見ただけで、放射線管理教育は終了。

八ミリの中では、防護服についてもちらっと出たが、誰も着方を教えてくれない。
「管理区域内では放管の指示に従ってください」
と言われていたが、指示に従うべき放管の姿もない。

結局、放射能から肉体を守ってくれる防護服やマスクを自己流で着込むしかなかった。


作業中、計画線量を超える放射能を浴びてしまうと、その労働者は作業からはずれなければならない。
しかし、計画線量をオーバーしていても、
「ポケット線量計の読み取り誤差かもしれない」
で済まされてしまったり、あるいは、
計画線量自体をアップさせてしまったりということは、ざらだった。


科学技術庁が立入調査に来た時には、朝から注意があった。
科学技術庁の方々が、調査の際、働いている人に直接、
放管は誰ですか、とか、放管教育はどうなっていますか、とか、
尋ねてくるかもしれません。
そのときには、放管の指示通り働いていますとか、ちゃんと放管教育を受けましたと答えてほしい、
と電力さんに言われていますので、よろしくお願いします」


管理区域内に入る時には、入り口で手続きを済ませ、管理区域用の作業着に着替える。

そこには、労働者が休憩する小さなスペースがあり、そこの黒板に、

「安全作業とは、人が作業しているのを、何もせずに横で見ていること」

という落書きがあった。



作業後はハンド・フット・モニターに入り、放射線を浴びていないかチェックする。

ブザーが鳴ると、横にあるシャワーで体を洗い、再びモニターへ。


ランドリーで洗濯された作業着が汚染されている場合も多く、
知らずに身につけることによって汚染されてしまうこともあった。

何度通ってもブザーが鳴る場合は、髪の毛を切ってやっと通過する場合もあったという。


原発というのは、労働者にある程度の放射能を浴びさせることが前提条件になっている場所なのである。


Victoriaでした。