大村大次郎 「バレると後ろに手が回る 脱税のススメ」 (8)税務署だって本当は国民に好かれたい

こんにちは。Victoriaです。

バレると後ろに手が回る脱税のススメ

バレると後ろに手が回る脱税のススメ

さて、税務署の調査官にはノルマがあり、
そのノルマを達成するために税務調査を行っているという話を前回見たんだけれども、
大村大次郎 「バレると後ろに手が回る 脱税のススメ」 (7)ノルマに追われる国税調査官 - Victoriaの日記



じゃあ、そのノルマの具体的な中身って何?

追徴税、つまり、お金が目当てなんじゃねー?って思うかもしれないけど、
国税調査官大村大次郎先生によると、
税務署や調査官が本当に欲しいものは、





不正。





税務署もお役所なので、
国民から嫌われたくはない。





じゃあ、好かれるためには、どうすればいい?






大型の脱税事件を次々と摘発すれば、
「税務署もがんばってるな」と国民から評価されるはず。
張り切っていこうぜー!






う〜ん、
発想がドーテーのおぼこい男子そのもの。





気になるおにゃのこの気をひくために、
ケンカに強くなってバッタバッタと弱い者をなぎたおしていけば、
クラス一の人気者になれるってか?








しかし、
これでいろんなことが腑に落ちた。





税務署にとって、
調査で発見した申告漏れが、
不正なものなのか、
単なる経理ミスなのかってのは、
自らの出世のみならず、
税務署全体の国民に対するイメージアップという意味でも死活問題。






・・・ということで、本日の結論 :




税務署にとって、
脱税の発見こそが、
みずからの存在意義を示す唯一にして最大のイベントである。





・・・

さて、
自らの存在意義を示すため、
社運ならぬ署運(?)をかけて脱税を追う調査官は、
さまざまな内偵調査を行う。





例えば、
家族連れで飲食しながら、
横目でレジがきちんと打たれているかを確認、
あるいは、
伝票が抜かれていないかを調べるため、
自分の伝票にこっそりと印を残しておいたりする。





後日、調査に訪れた際に、
自分がマーキングした伝票がなければ、





黒。





飲食に行く際には、
スーツで行くと署員だとバレるかもしれないので、
わざとカジュアルな装いで行くとか・・・





すばらしいプロ意識だけど、
友達になりたくないかも・・・?





・・・

本書の第5章では、
比較的新しい脱税スキームが紹介されていて興味深いんだけれども、
中に、ちょっと気になる事例があったのでご紹介。





<海外居住を装った脱税>



1 事件のあらまし

2010年10月31日付 朝日新聞によると、
東京地検特捜部は、米金融大手シティグループ在日支店(現・シティバンク)の元幹部を、
所得税法違反の罪で在宅起訴した。



元幹部は、東京都港区に住んでいながら、米国へ転出するとの虚偽の届けをを提出し、日本に住んでいないように偽装。
2005年分の所得計1億3900万円を隠して、
所得税約3300万円を逃れたとされる。



元幹部はシティグループに勤務していた際に、報酬として得たストックオプションを退職後に行使。
シティバンクプライベートバンクの口座で運用していた。



2 どこが脱税とみなされたのか


日本に居住していない者には、日本の税金はかからない。


具体的には、
日本を半年以上離れる場合は日本での居住がないとみなされ、
所得税は一部のみしかかからず、
住民税は原則かからない。


転居届を出してしまえば、
実際に日本を離れているかどうかを証明する義務などないので、
この元幹部のように、
虚偽の届け出を出し、
日本に住んでいないことにしてしまえば、
税金を逃れられることになる。


かつて、小泉内閣の金融相だった竹中平蔵氏も、
慶応大学教授時代にアメリカに転居届を出し、
日本の住民税を逃れていたとして国会で追及されたことがある。
(この件は結局うやむやで終わってしまったらしい)


元幹部はストックオプションで得た収益を脱税しようとしたと認定された。
大村氏によれば、
巨額な収益を得ている人が国外に転出などをした場合は、
実際に転出しているかどうかを調査する場合もあり、
このケースもそのようにして発覚したのではないかとのこと。



3 クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件との類似点
クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件で告発された八田隆氏のケースは、
おそらくこの事件と同類と見なされたのではないかと思われる。


           
国際的に活動している日本人の多くは、
日本にも家があり、
海外にもあって、
その両方を行ったり来たりしているパターンが多く、
税務署が考えるほど、
日本に居住しているかどうかはっきりさせることは容易ではない場合が多いはず、





国内市場の縮小に伴い、
今後ますます海外へ出て行く日本人が増えて、
税務署とのガチのケンカもますます増えるんじゃないでしょうか?






ホント、
お金儲けに専念してる時って、
税金のことなんてあんまり考えないものだけど、
後からイチャモンつけられないようにするために、
ちょっとでも収入のある人は全員、
ちゃんと税金対策をするべきだと思う・・・つくづく・・・





・・・ということで、本日の結論 :



国税が海外脱税を疑う5つのキーワード :
外資系・高額な給料・ストックオプション・海外居住・海外預金口座。




Victoriaでした。


・・・

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クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件についてはこちら。
田中周紀 「国税記者 実録マルサの世界」 (5)クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件 - Victoriaの日記
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