ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part 3 (20) 中国で仏教が弾圧された理由

こんにちは。Victoriaです。

2012年3月25日、キャンパスプラザ京都で行われたライフネット生命保険の出口社長の講義、
今回は、9世紀前後までの中国仏教のお話。





794年、
トゥプト(吐蕃チベットのこと)で、
インド仏教が中国仏教を押さえて主流となった。






このころのインド仏教は、
いわゆる密教と呼ばれるもので、







インドでできたばかりの密教は大変元気がよく、
山を越えてチベットまで布教に出かけた。







出口先生いわく、






「宗教は、できたばかりのころが一番元気がいい」







この後、
インドでは仏教が途絶えてしまうわけだけど、








チベットで生き残り、








後のモンゴル帝国、清の宗教になっていく。







・・・


一方、
中国にも、
この頃、密教系の仏教が伝わっている。








中国に仏教が入ったのは、




1 五胡十六国の時代、国家仏教として
2 唐の時代、密教として





の2回。






出口先生によると、
北京にあるお寺の半分は、
密教系だという。







・・・



唐の時代、
仏教は皇帝の庇護を受けて広まった。








例えば、
太宗は玄奘に命じて、
仏典の漢訳を敢行。
(参照→ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part 3 (8) 玄奘の奇跡 - Victoriaの日記





武則天は熱心な仏教信者で、
大雲経寺を建立、
自身をモデルにした大仏を造営、






また、
宮中での席順を、
「道先仏後」から「仏先道後」に改めさせたという。
(参照→ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part 3 (10)7世紀の東アジアは女性の世紀 - Victoriaの日記






このように、
為政者の手厚い庇護を受けて、
各地に寺院が建った時代があった一方で、







時の為政者の胸先三寸で、
たびたび弾圧されてきたのが中国仏教の歴史。








大々的に仏教を弾圧し、
廃仏を行った皇帝は4人で、






1 北魏の太武帝(423年 - 452年)
2 北周武帝(560年 - 578年)
3 唐の武宗(840年 - 846年)
4 後周の世宗(954年 - 959年)





これらの弾圧は、





三武一宗の法難(さんぶいっそうのほうなん)




と呼ばれ、
中でも、
唐の武宗が行った、
規模も最大で、徹底した法難が、






会昌の廃仏(かいしょうのはいぶつ)。






唐の武帝は、
道教を信じ、
道教保護の目的で仏教を弾圧した。







しかし、
これは単純に、





仏教 VS 道教






の争いではない。







出口先生によれば、
法難はむしろ経済政策の一環として起こったと考えるべきであり、







その背景に、
当時、仏教の寺院が裕福で、
かなりの財産を寺院にため込んでいたことがある。








寺院は広大な荘園の所有者でもあったわけだが、
税金を免除されていて、
また、
仏像を作るため、
大量の銅を消費していた。







道教保護のために仏教弾圧を行った唐の武帝とはちがって、
北周武帝は、
仏教・道教をともに弾圧し、
多くの僧を還俗させているが、
それは、
お坊さんになれば、
税金が免除されるので、
いわば合法的な脱税として、
僧になる者が後をたたなかったから。
(参照→ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part 3 (3) 日本に仏教が伝来した理由 - Victoriaの日記







皇帝の気持ちひとつで、
税金が免除されたかと思えば、
一夜にして多額の納税を迫られたりなんかして、
政策が変わるたびに振り回された仏教としては、
いい迷惑って感じ・・・?







出家すると、
軍隊から離脱できるので、
それも国家にとっては痛手だったらしく、
中国仏教は、
蜜月→弾圧→蜜月→弾圧・・・
の繰り返しで、
現在に至っている。







徹底した仏教弾圧を行った、
唐の武帝は、
33才で中毒死。







やっぱ、
なにかのたたり・・・?








・・・


宗教の弾圧といえば、
征服地を徹底したキリスト教化したカール大帝が思い浮かぶんだけど、
(参照→ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part 3 (18) ヴァイキング襲撃とカール大帝のキリスト教化政策 - Victoriaの日記









この記事の最後で、






なぜ、ローマ教会は、
暴力的ともいえる徹底した異教徒排斥を行ったのか?






と書いたところ、







早速、
出口先生からメッセージをいただきました。








出口先生、
いつもありがとうございます。








出口先生によると、
これは、
キリスト教の中でもローマ教会だけに見られる特徴で、







制度として異端審問まで確立したのは、
ローマ教会のみ。





政治的、
あるいは経済的な理由ではなく、
純粋に教義上の問題で異教徒を弾圧したり、







あるいは、
中国の法難のように、
お金持ちから財産を没収する目的ではなく、






貧しい人まで弾圧するのも、
ローマ教会だけに見られる特徴。







お金で解決するんだったら、
そこまで厳しく弾圧する必要はないけど、
純粋に教義上の問題だと、
相手を徹底的にたたきのめしてしまうっていうのは、
あるだろうなあ・・・









・・・ということで、本日の結論 :







仏教弾圧も、
結局、お金のためだったなんて、
中国の方って、
どこまでも現実的・・・







Victoriaでした。
ライフネット生命保険
生命保険





なお、
ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part 3」のまとめで、
今回が一番苦労しました。





インド仏教、
中国仏教、
チベット仏教の三つの資料を並べて読んでいたら、
頭が痛くなった・・・






仏教は宗派が多すぎ、
また、
インドから中国へ伝わる過程で大きく変容してしまったので、
何が本家本元なんだかさっぱり・・・






たびたびご質問させていただき、
出口先生には大変お世話になりました。






ありがとうございました。


・・・
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