中村淳彦「職業としてのAV女優」 (6) AV女優のその後−彼女たちは幸せになれるのか

こんにちは。Victoriaです。

職業としてのAV女優 (幻冬舎新書)

職業としてのAV女優 (幻冬舎新書)

さて、
「職業としてのAV女優」をお書きになった中村淳彦さまによると、





かつては映画と同じく「作品」と呼ばれていたAVは、
様々な紆余曲折を経て、
AV業界全体が「健全化」し、
「作品」というよりはむしろ、
冷徹なコスト感覚に基づいて生産される「商品」へと変貌した。







「売れる商品」を提供するために、
ユーザーの好みに合わせるというのは当然の企業努力。
したがって、
非日常的で反社会的なことをふんだんに盛り込んだ、
刺激の強い作品ばかり量産されるのは、
ほかでもないお客様である男性の好みを忠実に反映しているということになる。







本書で中村淳彦さまのインタビューに答えて、
太賀麻郎さまは、







「この数年間で、この業界に普通の人が増えた」







と証言。






これはAV業界が、
売れる商品を提供して利益を上げるという目的を共有した、
ビジネスマンの集団になったということを意味し、
女の子にとって「安心で安全な世界」になったという点は、
歓迎すべきことであるんだけれども、






ある程度、
顧客ニーズをリサーチして、
それなりのものを作れば売れるということが証明されると、
流れ作業で商品が出てくるようになるのはビジネスの常で、









女優はお金のために脱ぐわけだし、
メーカーも利益を生むために撮るわけだけど、
すべてがゼニ中心で回ると、
熱い現場だからこそ生まれた化学反応のようなものが一掃されて、
おもしろくなくなるっていうのはあるかもしれない・・・







AV業界が他品種小ロットの過当競争となり、
一本あたりの予算が大幅に縮小されるにつれて、
AV女優のギャラも暴落。







にもかかわらず、
AV女優志望の女の子は増える一方、
供給過剰にますます拍車がかかり、
誰でも脱げば稼げる時代ではなくなった、
というのが、
本書の結論。









志願したにもかかわらず、
幸か不幸かAV女優として採用されなかった女性の行く末については、
また、別の機会に考えるとして、









めでたく採用された女性の行く末について考えてみると、









中村淳彦さまが力説なさっているように、








女性は初々しい処女の状態がもっとも価値が高い状態と仮定すると、
出演してカラダをお金に換えるほど価値は下がるわけで、









他の職業とは違って、









がんばって経験積めば積むほど、
自分自身の価値は消費され、
値崩れしてしまうという負のスパイラルに陥るという運命が待っている。








いったん裸になって、
セックスを売る経験をした女性は、
いつか幸せになれるのか・・・???








・・・



本書には、
AV女優引退後、
結婚して幸せになった例として、
小室友里が登場する。









小室友里は、
現在36歳。
引退から12年が経ち、
現在では執筆や歌手活動、舞台出演をしている。
脱ぐことをやめ、
なおかつ、
小室友里というAV女優時代からの名前をそのまま使い続けて成功した希有な例といえるだろう。





小室友里さまのブログはこちら→小室友里の性活ブログ☆







小室友里さまによると、
AV女優としてあまりにも知れ渡っていたので、
ダンナに隠すという選択肢は最初からなかった、
ダンナはAV女優だったということに対して、
わりと理解があったので、
結婚して幸せに暮らしている。






AVを辞めて、
収入は激減したけど、
ずっと質素に暮らしていたので問題はなかった。






デビューして2年目くらいから、
引退したらどうやって生活していこうって考え出して、
そのころ、
いったんAV辞めて、
お金がないからってまた戻ってくる女優さんたちを見ていて、
あんなふうにはなりなくないと思い、







引退作を出せるうちに辞めようと決めた。








現役時代、
辞めたら将来大丈夫かな?って思ったこともあったけど、
今は、毎日それなりに充実していて、
幸せにくらしています。






そう、インタビューで答えている。







中村淳彦さまは、

小室友里さまが引退後、
幸せになることができたのは、








現役時代、
どんなに人気があって、
周囲にちやほやされていても、






これは、
一時的なものなのだ、という自覚を持ち、







生活水準をやたらと上げることなく、
常識的な金銭感覚を持ち続けたことにある、






たとえAV女優をしていたという過去があっても、







地に足がついてさえいれば、
幸せな人生を送ることができるのだと述べている。








・・・



これ読んでて、
これって、
AV女優に限ったことではなく、
女性全般に言えることじゃないかって思ったんだけど、








女って、
若いっていうだけで、
何物にも代えがたい価値を自分は持っているんだという妄想を抱いてしまう時期があって、










そのうち、
あんたも年増の仲間入り、
男が見向きもしなくなるよ〜、
なんて言われても、








「私だけは特別よ、フン!」








とか、
思っちゃうのよね・・・








今考えると、
おそろしいことなんだけど・・・








それで、
そういう時、
たまたま男にちやほやされた経験があると、








その女にとっての「恋愛の原風景」っていうのが、








道行く男にザッと振り向かれ、
どこへ行っても○○ちゃ〜ん!って呼ばれて、
かわいがられた私









になってしまって、








いったんそういうイメージがすり込まれると、
なかなか上書きできないっていうか、








もしかしたら、
世代全体でちやほやされた記憶のある、
バブル世代の女特有のイヤミな性格なのかもしれないけど・・・









中村淳彦さまは、
AV女優のその後の人生を阻んでいるものは、
脱いだという事実そのものではなく、
脱げばラクして稼げたという成功体験だと述べているんだけど、









ラクして恋愛勝者になれたという成功体験もまた、
その後の女性の恋愛体験の成否の鍵を握っており、
おおむね、
若い時、必要以上にちやほやされた女性は、
その後の人生で幸せをつかむのに、
苦労しております・・・







・・・ということで、本日の結論 :






恋愛とセックスは、
よかった体験も悲惨な体験も、
ともにサクッと忘れてしまうほうがいいみたい・・・







Victoriaでした。


・・・


中村淳彦「職業としてのAV女優」 バックナンバーはこちら。
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中村淳彦「職業としてのAV女優」 (2) 太賀麻郎、AVの深い闇について語る - Victoriaの日記
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