「高福祉・高負担」スウェーデンモデル

こんにちは。Victoriaです。

2010/11/28毎日新聞のトップに、「増税を問う」という記事がのっていました。
「高福祉・高負担」のスウェーデンモデルを日本は目指すのか・・・という内容。

大変興味深い記事でしたので、ちょっと拝借。

http://mainichi.jp/life/today/news/20101128ddm001040057000c.html

 ◇消費税25%で生涯自立、スウェーデンから来日 親と同居、教育費1000万円…に衝撃
 余生は一人で生きていくというスウェーデン在住の実母。自分たちとの同居を当然と思っている日本人の夫の母。スウェーデン出身のハンナさん(42)=仮名=は、あまりに違う2人の母を思うたび、ため息が出る。

 約20年前に来日。自営業の夫、3人の娘と東京都内で暮らす。夫の両親は地方に住んでいるが、元職人の義父は保険料を払ってこなかったため無年金で夫ら3人の息子からの月15万円の仕送りが頼り。義母は「日本では子供が両親の老後の面倒を見るのよ」「老後のことがあるから息子を大事に育ててきた」と暗に同居を迫ってくるが、ハンナさんはその気になれない。「同居したら両親の世話で仕事も生活も犠牲になる」

 実母アーダさん(75)=同=が一人住むスウェーデンは年金、介護が手厚く、自立生活を営む高齢者が多い。アーダさんは「孫が遊びに来るのは楽しいが、帰る時も寂しくない。やりたいことがまだいっぱいあるから」と話す。介護が必要になっても子供の世話になる気はない。「高い税金を払っているから行政が老後の面倒を見るのは当然。この国はその態勢も整っている」

 例えば認知症患者の在宅介護ではスタッフが1日5〜10回訪問し、食事、入浴、排便を手伝う。家族は簡単な身の回りの世話だけ。介護費用の自己負担は日本よりかなり少なく、家族へのしわ寄せもない。

 25%の付加価値税(日本の消費税)など高い税金を国民が受け入れているからこその手厚いシステムだが、老後の安心社会が約束されているため、将来不安に自分で備える必要もない。

 「子供の教育費で1000万、2000万円の貯金は必要よ」。日本で有料老人ホームを運営するスウェーデン出身のグスタフ・ストランデルさん(36)は8年前、長男の誕生直後、妻の言葉に腰を抜かした。子供の教育費はゼロ、老後の不安もないスウェーデンでは考えられない金額だ。日本生活10年目。「日本で安心して老後を迎えるには、いくら貯金すればいいのか。いまだに分からない」

 都内で年金暮らしの元大学教授、山内隆さん(74)=同=はスウェーデン、日本で教壇に立った。どちらでも月12万〜13万円の年金を受け取れるが、「一日も早くスウェーデンに移りたい」

 バリアフリー公団住宅は家賃8万円。食費、光熱費を入れると貯蓄を取り崩さなければ生活できない。さらに昨年末、背骨を折り手足が思うように動かなくなり、要介護2と認定された。掃除や洗濯、買い物の訪問介護を受けるが、「夜中でも電話1本で介護士が駆け付けてくれるスウェーデンとは安心感が違う。日本にいる息子に負担も心配もかけずに済む」と話す。
 ◇「桃源郷」でも介護職員削減
 スウェーデン桃源郷ではなくなりつつある。金融危機に見舞われた90年代初め以降、財政悪化を避けるため介護を運営する自治体も在宅介護へのシフト、民間委託などでコスト削減を進めている。人員削減の結果、15年には介護職員が20万人不足する可能性もあり、海外から安価な人手の受け入れを増やしている。

 日本に永住するつもりのグスタフさんは「消費税25%のスウェーデンでさえ給付を抑えなければ財政がもたない。日本は5%で社会保障をどうしようとしているのか」と不安を隠さない。

  ◇    ◇

 少子高齢化に伴う社会保障費の膨張に直面する日本。医療、介護水準を維持するだけでも消費税増税などの負担増は避けられないとの見方は強いが、負担増への反発も大きい。高福祉国家の北欧諸国の人々は、日本よりはるかに重い税負担をどう受け止めているのか。経済縮小が続く日本で、国民生活や中小・零細企業の経営は増税に耐えられるのか。福祉と暮らしの現場から、問う。<<

http://mainichi.jp/select/world/news/20101128ddm003040152000c.html

 ◇福祉と財政両立

 手厚い社会保障と比較的高い経済成長で、成熟国家のモデルといわれるスウェーデン。これにならおうと菅政権は「強い経済、財政、社会保障」をスローガンに掲げたが、財源確保のための消費税増税参院選大敗で尻すぼみになり、「強い社会保障」どころか現状維持すらおぼつかない。負担増を避け社会保障を抑制するのか、中福祉・中負担程度の増税を受け入れるのか、高福祉・高負担を目指すのか−−。

 大手商社、丸紅社員の鈴木敦さん(45)はスウェーデンストックホルムの駐在員時代、毎日の昼食が悩みのタネだった。職場近くのカフェで食べるサンドイッチとコーヒー、サラダのセットは付加価値税(消費税)25%分も含め約1300円。価格は日本の倍の感覚だ。それでも妊娠した妻の診察、長男出産まで無料。「高負担も高福祉も実感した」

 医療・介護費は自治体ごとに違うが、ストックホルムの場合、かかりつけ医に払う自己負担は何回診察を受けても年900クローナ(1万800円)以内。在宅介護サービスも回数にかかわらず自己負担は月1696クローナ(2万円)までだ。「高福祉」を支える国・地方の社会保障関連支出は国内総生産(GDP)比27・69%(07年)に上り、主に所得税と消費税で賄われる。

 地方自治体が担う医療、介護などの財源は平均31%の税率の地方所得税。月収3万1600クローナ(約38万円)以上の中高所得者には国の所得税(税率20、25%)も上乗せされる。最低保障年金などの財源となる消費税は原則25%だが、食料品などには12%、新聞などには6%の軽減税率が適用される。

 国民が負担している税と社会保険料の合計額が国民所得に占める割合(国民負担率)は64・8%(07年)に達し、経済協力開発機構OECD)加盟28カ国中トップのデンマーク(71・7%)に次ぐ。日本(10年度39%)をはるかに上回るが、スウェーデン北部で1人暮らしをする女性(75)は「払った分に見合う十分な介護を受けられる」と負担を意に介さない。

 90年代前半に急激な財政悪化に見舞われると、保育手当廃止や失業手当の給付率引き下げなど、社会保障分野を含めた聖域なき歳出削減を実施。地方自治体にも財政赤字に陥った場合、短期間で黒字転換を義務付けるルールがある。日本総研の湯元健治理事は「財源が足りなければ、増税かサービスを削るか。国民も負担と給付の選択がしやすい」と指摘。将来世代へのツケ回しでやりくりしている日本とは大違いだ。
 ◇医療水準に不満も

 ただ、歳出抑制のため、軽い病気への対応が後回しになることも多い。スウェーデン在住の日本人からは「熱が出て予約しても診察は3日後のことも」「救急でも3時間待たされた」など、医療サービス水準の低さへの不満の声も聞かれる。

 企業の社会保険料負担は賃金の3割強と日本の約3倍だが、法人実効税率は日本より低い。湯元氏は「社会保障が充実しているため福利厚生費負担も軽く、税、社会保険料を含めた企業の労働コストは日本とほぼ同水準」と分析。さらにリーマン・ショック後、経営危機に陥った自動車メーカーのボルボやサーブなどを政府が支援しなかったことを例に「斜陽産業を整理し、生産性の高い分野に労働力を移動させる産業政策をとっていることも、成長力向上に寄与している」と評価する。

 衣料品のH&M、家具のイケア、通信機器のエリクソンなど世界で活躍する企業も多く、ダボス会議を主催する「世界経済フォーラム」が9月にまとめた国際競争力ランキングで2位(日本は6位)に入っている。
 ◇日本の制度、20〜40年遅れ

 日本の社会保障関連支出はGDP比19・15%(07年)でスウェーデンより小さいが、それでも税金や社会保険料で賄い切れず、国の借金で穴埋めしている。将来、国民の負担となる借金を含めた「潜在的国民負担率」は52・3%(10年度)とイギリス(51・7%、07年)、ドイツ(52・6%、07年)並みの「高負担」。国と地方の債務残高はGDPの2倍近くに達している。

 これまで日本の社会保障費は「長期雇用を前提にした企業の福利厚生や家族による無償の介護・子育てにより、安上がりに済んできた」(みずほ情報総研藤森克彦氏)。だが、長引く景気低迷で企業は非正規社員を増やす動きを加速。未婚化、晩婚化で単身高齢世帯の割合も増加しており、安上がりの社会保障の前提だった「企業の福利厚生」「家族間扶助」はいずれも縮小の方向だ。福岡市の派遣会社に勤める独身女性(27)は「老後に備えたいが貯金する余裕はない。年を取った時に一人で野垂れ死にしないか不安」と話す。

 早くから高齢化が進んだスウェーデンでは1940年代後半に高齢者介護が社会問題化し、60年代初頭には介護制度の充実策に着手。69年に付加価値税(消費税)を導入した。一方、日本で「寝たきり老人」が社会問題化したのは80年代半ば。消費税導入は89年、介護保険制度導入は00年とスウェーデンから20〜40年遅れている。

 スウェーデン北部のシェレフテオ市役所勤務の経験がある地方公務員の金田幸宏さん(40)は「スウェーデンでは、行政サービスを少しずつ、実感できる形で拡大してきたので、負担の必要性への理解も広がった。給付と負担のバランスの適正化を迫られている日本も参考にすべきだ」と指摘する。<<

http://mainichi.jp/life/today/news/20101128ddm008020153000c.html


>>聞きたい:「高福祉・高負担」スウェーデン・モデル ヌーデル前財務相
 「高福祉・高負担」で知られるスウェーデン・モデル。重税にもかかわらず、国際競争力のある企業を生み出し、日本より高い経済成長を遂げているのはなぜか。スウェーデンのぺール・ヌーデル前財務相(47)に聞いた。
 ◇成長分野に重点投資

 −−高負担は成長を阻害しませんか?

 ◆高い税金を教育、研究開発、インフラなど経済成長に寄与する分野に使っている。福祉政策も例外ではなく、成長につながるかの観点で予算配分を決めている。例えば、育児休暇制度。子どもが生まれると両親は合わせて480日分の休暇を取得でき、390日間は政府が賃金の80%以上を保証する。その結果、働く女性の割合(就業率)は70%超に達し、経済を支えている。日本も女性の就業率を(現在の6割台から)高め、社会保障の担い手になってもらわなければ、少子高齢化社会に立ち向かえない。

 −−日本では社会保障費の財源確保のための消費税増税論も浮上していますが、景気への悪影響を懸念する声も根強くあります。

 ◆スウェーデンでは、長い時間をかけて付加価値税(日本の消費税に相当)の必要性を国民に訴えてきた。「集めた税金を高齢者や子どもたちのために使い、安心が生まれるようにする。そうすれば、消費者は財布のひもを緩め、お金を使うようになり、景気に好影響を与える」と。高齢化が進めば負担増は必然。政治のリーダーは増税を求めるにあたって、何に投資し、それがいかに国民に安心を与えるのかを示さなくてはならない。行政の透明性を高め、政治家に対する有権者の信頼を築くことも大切だ。スウェーデンでは公的部門の文書や公務員の一人一人の給料まで国民に知らせている。常にメディアや市民に監視されることは、公的部門の効率性を高めることにもつながっている。

 −−スウェーデンにはイケアやH&M、エリクソンなど、国際的に活躍する企業も多いのですが、競争力強化のためにどのような政策をとってきましたか。

 ◆法人税率は(約26%と)低水準に抑えている。また、スウェーデンは小さな国なので、成長するには外国に対してもオープンでなくてはならない。そのため、市場の規制は少なく、競争原理が働くようになっている。公的部門が教育を通じてスキルのある人材を民間部門に供給、民間部門が経済成長を推進し、公的部門を資金面で支えている。大きな公的部門と強い民間部門は相互依存の関係にある。<<

スウェーデンの高福祉は、高い経済成長と国際競争力のたまものである、という内容の本が出た模様。

スウェーデン・パラドックス

スウェーデン・パラドックス

ただ、Victoria、まだ、読んでおりません・・・

結構ボリュームのある記事の最後に載っていたのがこのコラム。
http://mainichi.jp/select/wadai/naruhodori/news/20101128ddm003070145000c.html

>>質問なるほドリ:消費税って何に使ってるの?=回答・田畑悦郎
 <NEWS NAVIGATOR>

 ◆消費税って何に使ってるの?
 ◇「高齢者医療」「年金」「介護」に特化 10年度予算で9.8兆円不足、財源確保課題
 なるほドリ 買い物のたびに払っている消費税、いったい何に使われているんだろう。

 記者 89年の導入時は、特に使い道を限定していませんでした。「高齢者医療」「基礎年金」「介護」の3分野のみに使う「福祉目的化」を国の予算の基本ルール「予算総則」に明記したのは99年度からです。

 Q なぜ、福祉に使うことにしたの。

 A 所得税法人税に比べ、景気の影響を受けにくく税収が安定しているのに加え、税率が25%のデンマーク、17・5%の英国などより低く、社会保障費の伸びに応じた引き上げが可能ではないかとみられているためです。当時の政府・与党には「福祉充実を理由にすれば、増税への国民の理解を得やすい」との思惑もあったようです。

 Q 社会保障費の財源が安定するなら、安心だね。

 A そう簡単ではありません。消費税5%のうち、国に配分されるのは2・82%分、つまり税収全体の56・4%で、残りは地方自治体に回ります。10年度の消費税収は12・1兆円の見通しなので、国が使えるのは地方に回る分を差し引いた約6・8兆円となります。3分野に必要なお金は10年度当初予算で16・6兆円なので、9・8兆円も足りません。

 Q 社会保障費はこれからどんどん増えていくのに、いまでも足りないなんて!

 A 3分野以外にも一般医療費などもあり、社会保障給付に充てられる国の歳出は10年度当初予算で27・3兆円に上ります。高齢化により、年金受給者や医療、介護サービスの利用者はさらに増えるので、現行制度を維持するだけで毎年1兆円超も増えるそうです。

 Q 足りない分はどうしているの?

 A 10年度当初予算では、社会保障費をはじめとした国の一般会計歳出は92兆3000億円ですが、税収は37兆4000億円。特別会計の積立金である「埋蔵金」を取り崩しても全く足りず、税収より多い44兆3000億円もの国債発行、つまり借金をしてしのぎました。

 Q 菅直人首相が一時、言っていた通り、消費税率を10%に引き上げれば借金頼みから抜けられるのかな。

 A 消費税1%当たりの税収は2・4兆円なので、5%引き上げると約12兆円の増収になります。国と地方の配分割合がこれまで通りなら、国分は約6・8兆円増えるだけで、3分野の不足分すら賄えません。社会保障の財源確保のための議論は待ったなしと言えます。(経済部)<<

結局、高福祉のためには消費税増税を・・・という結論でした・・・

Victoriaでした。