藻谷浩介 「デフレの正体」

こんにちは。Victoriaです。

朝日新聞社が「3・11」の東日本大震災原発事故からの復興と、その先の日本全体の再設計を論じあう「ニッポン前へ委員会」を設立。

委員は次の9人の方々。

兵庫県尼崎市長・稲村和美さん(38)
建築家・福屋粧子さん(39)
津田塾大准教授・萱野稔人さん(40)
東大特任准教授・神里達博さん(43)
日本政策投資銀行参事役・藻谷浩介さん(46)
劇作家・平田オリザさん(48)
千葉大教授・広井良典さん(49)
大阪大教授・大竹文雄さん(50)
東大教授・加藤陽子さん(50)

この委員に選ばれた藻谷浩介さん。
たしか、朝日新聞土曜版beのフロントランナーに載っていた。

そこで、藻谷浩介さんの数ある著書の中で、絶賛されている「デフレの正体」を読んでみた。

デフレの正体  経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)

デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)

率直な感想 : 
Victoria、次々と出てくる数字による事実の裏付けってのに、全くついていけない・・・

いや、もう、内容うんぬんじゃなく・・・
藻谷さんは、すごくシンプルなことを、数字を動かぬ証拠として示しながら、お話になってるわけで、
おっしゃってる内容がすごく画期的で、バブルの崩壊以後の長く続く日本のデフレの正体がついに暴かれる!って感じのセンセーショナルな本にしようという意図はよくわかるんです。

たくさんの著名な方々が推薦なさってるようだし、
(新書の帯に書かれているだけでも、池上彰山田真哉小飼弾養老孟司佐々木毅飯尾潤山口二郎山田昌弘福岡伸一、吉岡忍、上田涉ほか)
「難しくてさっぱりわからんだわ」
っていうのは、インテリジェンスの欠如を暴露してしまうようで、できれば避けたい・・・と思って、がんばってついていこうとしたけど、ダメだった。

気を取り直して、著者略歴を見てみると・・・
日本政策投資銀行参事役!

やっぱりね・・・
銀行員の方の水も漏らさぬ理論には、超の上にスーパーがつくくらいどんぶり勘定のVictoriaがついていけるわけもなく・・・

著者略歴には、
「合併前の約3200市町村の99.9%、海外59カ国を私費で訪問した経験を持つ」
って書いてあった。
そういえば、be紙上でも、たしか全国の鉄道を踏破し、さらに、自転車で列島一周したとか書いてあった気がする。
だから、決して数字だけに頼って理論を構築しているわけではなく、今、日本中の現場で何が起こっているのか、っていう強烈なイメージがあって、むしろそれを裏付けるための証拠として数字を並べているわけで、そういう意味では、ぜひとも読んで納得したい一冊であったんだけれど・・・

ある本が、自分にとって読みやすいかどうかって、著者の言葉のリズムにのれるかどうか、だと思うの。

これって、案外、その人の肉体的な条件に左右されるんじゃないかって、最近思っていて・・・

一文がすごく長い人がいるけど、きっと息が長く続くんだろうな・・・て思ってみたり・・・

それでね・・・
藻谷さんの文章のどこが自分と合わないんだろうって考えてみた。

藻谷さんってね・・・
「世間で一般的に信じられてる理論はこうこうですけど、それはそうではなくてですね、まず、背景から説明しますと・・・」
って感じの話の持って行き方をする人なのよ。

まず、世間一般に信じられている理論っていうやつ、ここでは経済論ね、それ自体、よく知らないVictoriaは、この時点ですでに落ちこぼれてしまう。

金融緩和って言葉を聞いても「?」だから、それに反論されても、一体何がどうなってんだか・・・

それに、背景からの説明が非常に長い。
それだけの説明がないと、正確な数字を示せないのはわかるんだけど、どこにどう着地するかわからないまんま、数字のオンパレードを見せられてもね・・・

感覚だけで生きてきた人間にはちょっとね・・・

ただ、第1講だけは、大変腑に落ちましたので、ちょっとご紹介したいと思います。

まず、ある市の駅前の写真が示される。

駅前広場に入っているのは消費者金融だけ。
普通の店はもちろん、コンビニもファーストフードもない。
狭くて歩道もなく、回りは空き地だらけ。
要するに更地ばっかりっていう、典型的な地方都市の玄関口。

この写真を見れば、どんだけ不景気な地方都市かって思うんだけど、実は、これが愛知県東海市なのよ。

東海市っていったら、全国最強の財政状態を誇る愛知の中でも優等生の景気のいい町でしょ。

それが、駅前はこの状態。

それでね・・・
藻谷さんの分析では、駅前がこの状態で長く放置されてきたのは、東海市が貧しいからではない。
むしろ、駅前の地権者が豊かで、別段何もする必要を感じなかったからだ。
土地建物に絶対の権利を有する地権者が「土地を活用してもっと儲ける」という「合理的」な行動を取らないから、いくらポテンシャルのある場所でもまったく開発が起きない。
キャスティングボードは景気という総論的な事態ではなく、地権者という個別の経済主体が握っている。

うん・・・
ほんと、そのとおりだと思う。

地方都市へ行くと、駅前商店街はシャッター街だと言われるけど、あれって、車社会になって、郊外型の店舗に顧客をとられたっていうのももちろんあるけど、それ以上のものがあると前から思っていた。

商店街の店主って、昔は店舗兼住宅でそこに住んでいたかもしれないけど、景気がよかったころにお金を稼いで、稼いだお金で郊外に土地買って、自宅はよそに建ててる人がほとんどなのよね。

だから、店主が高齢化してお店をたたんじゃうと、とたんに空き屋になる。

子どもが後を継いでくれればいいんだけど、たいてい、家を出てどっかでサラリーマンやってるでしょ。
すると、その子どもは、事業を継ぐことには興味はないんだけど、オヤジの土地を継ぐことにはものすごく執着することが多い。

だから、土地は売られることなく、結局、おやじが死んだ時に相続。

そしたら、相続税が高くて払えないから、結局、土地を売ってそのお金を兄弟でわけて・・・

売られた土地はまわりまわって、消費者金融がテナントとして入るしかなく・・・

駅前商店街にシャッターが増えたのって、相続税にもその原因があるんじゃ・・・

・・・
ということで、大変インスピレーションに富んだすばらしい本ですので、数字に強い方はぜひ・・・

Victoriaと同じく、本は数字じゃなくて、やっぱり文章のもってるリズムで読みたいって思ってる方は、さけたほうがいいかもしれません。

藻谷浩介さん、ごめんね〜
お話はおもしろそうだから、講演があったらぜひ行きたいわ。

Victoriaでした。