水野和夫・萱野稔人 「超マクロ展望 世界経済の真実」 (5) 金融危機は単なる景気循環の中の不況ではない

こんにちは。Victoriaです。

超マクロ展望 世界経済の真実 (集英社新書)

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今回は、金融危機は単なる景気循環の中の不況ではない」のまとめです。

1 経済覇権国の金利の推移

ここで、経済覇権国の金利の推移をグラフにしてみよう。

資本の利潤率は長期的には利子率としてあらわれるので、金利の推移のグラフをみれば資本主義500年の歴史が読み取れる。

例えば、アメリカ。
第二次世界大戦後、アメリカはどんどん利潤率を上げていって、1980年代初頭にピークをつけて、その後下がっていく。

アメリカの前の覇権国イギリスでも、19世紀前半まで利潤率が上がっていき、そのあとどんどん低下するのがわかる。

イギリスの前はオランダ。その前はイタリア。

世界資本主義の歴史は、特定の国がそのつどヘゲモニーを確立しながら、そのヘゲモニーが移転されていくことで展開してきたわけだが、それは金利の推移として読み取ることができる。

2 金融経済化はヘゲモニーのたそがれどき

経済覇権国の金利の推移をみていると、どの国のヘゲモニーにおいても、まず実物経済のもとで利潤が上がって、次にそれが低下することで、金融化が起こる。

そして、金融拡大の局面で、ある種のバブル経済が起こる。

最終的に、金融化が進むと、その国のヘゲモニーも終わりにむかう。

つまり、金融拡大の局面というのは、その国のヘゲモニーのたそがれどきであって、金融拡大の局面で蓄積された資本は、新しい覇権国へと投資されていく。

たそがれどきの金利というのは、2%くらいで、そこまで下がると投資の限界、つまり、リターンがほとんどないから投資してもしょうがないとなる。

今の日本の状態はまさにここだ。

このように、世界資本主義の歴史におけるヘゲモニーの変遷という観点から見ると、今回の金融危機は単なる景気循環のなかの不景気だという話ではなく、ヘゲモニー交代が起こるか、あるいは、世界資本主義のヘゲモニーの構造そのものが変化してしまうのかもしれない。

3 サブプライムローンの実態

イギリスは、世界の海を支配することで、自由貿易という新しいルールを確立し、世界的ヘゲモニーをうちたてた。

つまり、支配権を確立する過程で、略奪行為が不可欠だったということだ。

今回の金融危機の元凶となったサブプライムローンも略奪的なものである。

かつてイギリスの海賊たちが海へ出て行ってやったことを、アメリカは自国民に対してやってしまったということだ。

有利な交易条件が消滅していくなかで、利潤率を維持しようと、自国民に対して高利貸しと同じことをやったわけだから。

言い換えれば、これまでのグローバル化は、外部に有利な交易条件を求めてそこから利益を得るというかたちだったが、今起こっているグローバル化は、地球全体がグローバル化してしまって、外部が消滅してしまったとも言える。

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まとめは(6)へつづく・・・

Victoriaでした。