水野和夫・萱野稔人 「超マクロ展望 世界経済の真実」  (6) アメリカのあとにヘゲモニーを握る国はどこか

こんにちは。Victoriaです。

超マクロ展望 世界経済の真実 (集英社新書)

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今回は、アメリカのあとにヘゲモニーを握る国はどこか」のまとめです。

1 中国はアメリカのヘゲモニーを奪い取るか

これまで、世界資本主義のヘゲモニーが移動するときは、より大きな軍事的支配力をもつ国家に移動してきた。

金融危機までのバブルでふくらんだ金融資産が投資され、ものすごい勢いで成長している中国だが、アメリカに拮抗するだけの軍事力がないので、ヘゲモニーを確立することは難しいと思われる。

単に、生産拠点や技術が移転され、経済成長がなされ資本蓄積が行われるようになるだけでは、資本主義のヘゲモニーは動かない。

ヘゲモニーを獲得するためには、世界のお金やモノの動きに関するさまざまなルールや制度を策定する力がどうしても必要だ。

例えば、韓国のサムスン・グループのあげた利益のうち半分ほどは欧米系の資本にすいあげられていると言われている。

外資がどんどん入ってきて株を買い占めてしまったので、配当というかたちで利益はが他国の資本へと流れていくためだ。

だから、これからは、生産を通じて資本の蓄積がおこなわれる場所と、軍事的あるいは金融的に世界経済がコントロールされる場所が分裂して、世界の中でヘゲモニーが分担されるようになっていくのではないか。

2 先進国の中産階級の没落

実物経済のもとで利潤がもたらされる場所と、その利潤が集約されコントロールされる場所が分離すると、資本と国民の分離が生じる。

利益は普通、国民に還元されるが、資本と国民が分離すると、中産階級は十分な利益を享受できなくなる。

その影響が深刻なのは、先進国の中産階級だ。

生産拠点がどんどん先進国から新興国に移り、先進国の資本が新興国生産現場と結びつくようになると、先進国の国民に仕事やお金がまわってこなくなってしまう。

先進国の資本が自国の国民を見捨てるわけで、先進国の労働者は新興国の労働者との国際競争に敗れて没落してしまう。

グローバルな世界の中で、資本主義のルール策定や運営にたずさわるひとたちはより大きな利益を得るが、その繁栄の裏で、多くの中産階級以下の人たちが没落していくだろう。

3 新興国の台頭がもたらす本当のインパク

ヨーロッパのグローバル化が進展した1870年から2001年に着目すると、地球の人口の約15%だけが豊かな生活を営むことができたのがわかる。

つまり、15%の人々が、残りの85%から資源を安く輸入して資本主義のメリットを享受してきたわけだ。

全地球がグローバル化する現代では、OECD加盟国の10億人以外の、57億人全員が資本主義の恩恵を受けようとする。

しかし、全員がグローバル化していくと、安く仕入れる先がもうなくなってしまう。

これからは、先進国に新興国が合わさって、資源の争奪戦が激化していくだろう。

世界中の人たちが、むちゃくちゃに資源を使わないようにしないと、これから世界は破滅の方向へと向かっていくかもしれない。

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まとめは、(7)へつづく・・・

Victoriaでした。