堀江邦夫 原発ジプシー (2) 原発ジプシーという言葉の意味
こんにちは。Victoriaです。
- 作者: 堀江邦夫
- 出版社/メーカー: 現代書館
- 発売日: 2011/05/25
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<わしらは原発ジプシーみたいなもんさ>
本書のまとめに入る前に、「原発ジプシー」という言葉について、説明しておきたい。
「ジプシー」という言葉は差別語だとして、使うのを控えるべきだという声に対して、堀江さんは以下のように述べている。
・・・
たしかに、「ジプシー」という言葉は差別語かもしれないが、
これは私の造語ではなく、1970〜1980年代にかけて実際に広く使われていた、
いわば、歴史的な意味のある言葉だと思っている。
当時、各地の原発現場を転々とする労働者がたくさんいた。
彼らは、電力会社はもとより、元請けや下請けの者たち、時には地元住民からも
「よそ者」「得たいの知れぬ者」と白い眼を向けられていた。
放射線下で厳しい労働を強いられ、
仕事が終われば切り捨てられ、
その地を追われるようにして立ち去らざるを得ない自分たちの姿を、
異なる状況下で同じように差別や迫害にあっているジプシーの人々に重ね合わせ、
同じ「痛み」のなかに置かれた者同士の血を吐くような共通言語として、
自らを「原発ジプシー」と呼んだ日雇いの下請け労働者たちの存在を、
「ジプシー=差別語」ということで、その言葉を排除してしまうことで、
抹消することはできない。
最近では、原発では釜ヶ崎などの日雇い労働者を雇わなくなっている。
身元の不確かな者が原発で働いている、という話がひろまったことへの、
電力会社の対策の一環といわれ、
周辺地域住民の中から労働者を募集するようになっている。
ということは、各地の原発を渡り歩く日雇い労働者の存在がなくなりつつあるわけで、
「原発ジプシー」という言葉もいずれ消滅してしまうのかもしれない。
・・・
そういう理由で、増補改訂版を刊行するに際して、
堀江さんはあえて「原発ジプシー」という言葉を残したそうである。
堀江さんは、各地の原発現場を転々とする日雇い労働者はなくなるのではないかと言っているが、
今回の福島第一原発事故を受け、
周辺住民が大勢、避難民になったことや、
労働者の間で相当量の被ばくが広まっていることもあり、
周辺住民だけでは十分は労働力が確保できないため、
以前のように、全国から労働者を募集するようにならざるを得ないだろうから、
「原発ジプシー」はまた復活するのではないかと思う。
本文中で、各電力会社が労働者の身元を確認するために、
健康保険証だの住民票だのを提出させようとする場面が出てくるが、
そうやって身元を確認して、被ばくの追跡調査をするのかと思いきや、そうではなく、
被ばく歴は労働者本人に対しても開示されていないという。
それならば、電力会社のデータベースに蓄積されているであろう膨大なデータは、
一体何のため・・・?
Victoriaでした。