東京ノアール (1)キリトリ

こんにちは。Victoriaです。

東京ノアール 消えた男優 太賀麻郎の告白

東京ノアール 消えた男優 太賀麻郎の告白

さて、総ページ数639ページの長編小説「東京ノアール」、
やっと今日、読み始めることができました。


本日、404ページまで読了。


著者の東良美季さまが、
太賀麻郎さまに取材を重ねてできあがった本だから、
本来なら「ノンフィクション」として売り出してもいいはずなのに、
わざわざ「小説」の形をとったという理由が、
ちょっとわかった気がした。



関係者がまだみんな現役バリバリで生きていて、
特にAV業界の話だから、
昔の話に触れられたくない女の子も多いはず、
そういう意味で、仮名を使わざるを得ないってこともあるだろうし、
東良美季さまが、
太賀麻郎さまへの取材方針として、
あえて裏はとらないスタイルをとったということもあると思うけど、




時系列に沿って順々に語られる太賀麻郎さまの過去を読みながら、
これって、太賀麻郎の記憶の組み替えだよねって。





ひとつひとつの事実はとても重くて、
それは、暗いとか怪しいっていう意味の重さじゃなく、
一人の人間に降りかかる出来事としては、
最上級に中身が濃いっていう意味で、
そこが太賀麻郎がスーパースターであるゆえんなんだけれども、
ここに書かれている内容は、
ほぼ、事実そのままだと思う。




だけど、
やっぱりこれはノンフィクションじゃないなって思ったのは、
これだけのボリュームの本を読むわけだから、
ものすごい情報量なわけで、
この一年で一番の集中力を発揮して読んだんだけど、
読みながら頭に残るのは、
ひとつひとつのエピソードじゃなくて、
その時、その時に太賀麻郎が感じていたであろう「気分」なのね。





本書は、
「俺」という一人称で語られていて、
つまり、太賀麻郎が語るという形式なんだけど、
ページのどこを開いても、
見事にそこには太賀麻郎の目線で見た世界が広がっている。





きっと、
太賀麻郎という人は、
昔の出来事をきっちり記録に残しておくような人ではなくて、
おそらく、その日の気分で、
頭に浮かんだことをそのまま、
東良美季さまの前でしゃべっただけだと思うけど、
驚くほどの鮮明さで、
あの日の自分の気分というのを再現できる人なんだ。





それが、
複雑にからみあったぐっちゃぐちゃの現実の糸を、
手品師のように見事にほどいてみせる東良美季の作家としての技とドッキングして生み出されたのが、
「東京ノアール」。





なぜ、これが太賀麻郎の記憶の組み替えだと思ったかというと、
太賀麻郎という人は、
ものすごく正確に過去の気分を再現できる人ではあるんだけど、
普通の人間だったらひとつあれば、
それだけで、十分、老後、孫に自慢できるくらいのすごい体験を、
それこそ数珠つなぎのように次から次へと重ねる中で、
一種、悟りの境地に達したんだろうね、
その場、その場の自分の気分の中で、
最も本質的な部分を輝かせることができるというか、
ある意味、余分なものがそぎ落とされて、
本当に大切に抱き続けたものだけが、
記憶に残っているというか・・・






たぶん、
現在進行形で事件のまっただ中にいる時に感じていた気分と、
本書で語られている気分とは、
微妙に違うんじゃないかな・・・






それは、
ウソをついているというのとはちょっと違って、
自分の人生を見せるということがどういうことか、
わかっている人間だからこそできる芸当で、






太賀麻郎は、
やはり男優なのだ





としみじみ・・・







・・・


さて、
そんな根っからの男優である太賀麻郎さまに、
ぜひこの場面だけでも演じて見せていただきたいという、
Victoriaお気に入りの場面があって、






キリトリ。





男優をやめた太賀麻郎さまが、
バブル景気で世の中全体が浮かれていた時期に、
借金取りをしていたというエピソードで、




アルマーニのスーツに、ネクタイは無し、
幅の広いドレスシャツのえりを外に出すという、




麻郎ルック



でキャバクラのドアを、





バァーン!






と蹴り飛ばして乗り込むシーンなんだけど、





勝手にVIP席にどっかと陣取った麻郎さま、
あわててわらわらとはべった女の子に、
にっこり笑って、





「コーラ。俺ね、お酒はハタチの時にやめたの」







もしも、「東京ノアール」が映画化されることがありましたら、
ぜひ、この場面は思いっきり派手にお願いします。





・・・

ここで、ちょっと失礼して、
業務連絡です。

イースト・プレス社さま>
「東京ノアール」で、誤植みつけましたので、第2刷の際には訂正願います。

  • 178ページ、12行目
  • 180ページ、15行目
  • 323ページ、12行目


以上です。 


・・・


・・・ということで、ひとつ、質問よろしいでしょうか?




太賀麻郎さま、
キリトリの時に着ていたアルマーニは薄いグリーンだったって書いてあるけど、
パンツは細身だったのかしら?
それともダブダブのヤツ?




私のイメージでは、
ちょっとルーズな感じかなって・・・





Victoriaでした。


・・・

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