ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part 3 (23) アッバース朝がバグダードからサーマッラーへ遷都した理由
こんにちは。Victoriaです。
2012年3月25日、キャンパスプラザ京都で行われたライフネット生命保険の出口社長の講義、
今回は、9世紀イスラム帝国のお話。
833年、
アッバース朝第8代カリフとして、
ムウタスィムが即位。
ムウタスィムは、
「千夜一夜物語」にも登場する第5代カリフ、
ハールーン・アッラシードの8男。
(参照→ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part 3 (17) バグダード黄金時代のアラビアン・ナイト浮気事情 - Victoriaの日記)
さすが、
ハールーン・アッラシードの子どもは、
人材の宝庫だったようで、
第7代カリフで、
知恵の館を開設したマームーンは、
ムウタスィムの兄だったし・・・
(参照→ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part 3 (21) アラビアン・ナイトの世界の方たちは、セックスより本がお好き? - Victoriaの日記)
ムウタスィムの最大の功績は、
マムルークを親衛隊として登用したこと。
マムルークというのは、
トルコ人奴隷のことで、
子どものころから乗馬に親しんでいた騎馬民族なので、
馬に乗りながら矢を射るのが抜群にうまかったため、
幼少のころから徹底的に訓練を受けて、
エリート軍人として育成された。
当時、
イスラム帝国には、
アラブ人やペルシア人からなる正規軍がいたが、
それだけでは心配だったムウタスィムは、
即位前から私兵として数千人のマムルークを所有、
即位後はマムルークの軍事力を利用し、
各地の反乱を徹底的に鎮圧した。
しかし、
奴隷にでかい面をされたバグダードの市民はおもしろくない。
激怒したバグダード市民はマムルークを迫害、
困ったムウタスィム、
何と、マムルークを連れて、
バグダードから逃げ出してしまう。
仲良しのマムルークがいたのかしらね・・・???
836年、
首都をサーマッラーに遷都。
892年にバグダードに戻すまで、
50年余りの間、
サーマッラーは首都として繁栄した。
・・・
その後のイスラム帝国の歴史を見ると、
マムルークを重用しすぎたあまり、
逆にカリフの権威は失墜、
861年、
ムウタスィムの息子で第10代カリフ、ムタワッキルが、
マムルークによって暗殺され、
その後、
アッバース朝は分裂を繰り返し、
弱体化していく。
・・・
カールの戴冠からわずか40年で分裂してしまったカロリング朝と同じく、
アッバース朝も、
第2代カリフ、マンスールや、
第5代カリフ、ハールーン・アッラシードの時代に全盛期を迎えたものの、
それは、
個人の能力に依存していた部分が大きく、
卓越した個人の才能が、
たまたま時代の流れに合って開花した帝国というのは、
その王様が死んでしまったとたん、
バラバラになってしまうという歴史が、
ここでも繰り返されていく。
そうならないためには、
官僚制をきちんと整備しておく必要があるのだけれど、
王様が存命中は、
戦争して領土を拡大したり、
軍隊を強化することに忙しくて、
そこまで手がまわらないのか、
栄華を誇った帝国が、
あっという間に衰退していくさまは、
まさに、
盛者必衰の理をあらはす。
Victoriaでした。
・・・
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