おとなの恋 (20) 瀬戸内寂聴「花芯」  おとなの恋の教科書

こんにちは。Victoriaです。

さて、
瀬戸内寂聴「花芯」は、

花芯 (講談社文庫)

花芯 (講談社文庫)

寂聴さまがまだ晴美さまだった頃にお書きになった初期の作品なんだけど、
おとなの恋の教科書みたいな作品で、
なぜかというと、
恋の要素が全部詰まってるから。







主人公の園子は、
結婚するまでは処女だったんだけど、
高校生の時、
教師とキスをしたことがあって、








毎日、毎日、
濃厚なキスをむさぼりあってるんだけど、
会って別れるまで愛の言葉をかわすことなく、
皮膚と皮膚との答え合いだけですべてが語られていて、







その関係を、
園子は、











行為であって恋ではない










と言っていて、
う〜ん、
まさにその通り・・・








性欲だけでつきあってる相手とか、
行為自体が新鮮で(例えば、ファーストキスしたばっかりで、キスのパターンを開発中の時とか)、
いくらやっても飽きない・・・、
そんな時は、
ぶっちゃけ、
相手は誰でもよく、
手近にいて、
自分の性的好奇心を満たしてくれる人ならとりあえず誰とでもできちゃう・・・








あれは行為であって恋ではないのか、
もっと早く知っていればよかった・・・








・・・ということで、本日の結論 :








行為と恋を混同すると、
泣きをみます・・・










園子は、まだ恋をしたこともないというのに、
結婚には現実的で、
事務的な日常的な取り決めの一つとして、
熱烈なプロポーズをしてくれた雨宮と結婚し、
子どもももうけたが、








ある時、
夫の上司の越智に出会って、
激しい恋におちてしまう。








園子が恋におちたことは誰の目にも、
特に夫の目に明らかで、







それまで夫からのセックスの誘いを断ったことはなく、
すれば必ず満足していたというのに、
夫に触られることすら拒否してしまう。







食べ物ものどを通らなくなり、
げっそりやせてしまって、
一日中考えることは越智のことばかり。








この段階では、
お互いの気持ちすらまだ確かめていないというのに、
すごい盛り上がり方なんだけど、









結局、
夫とはいっしょに暮らせなくなってしまい、
家を出て、
四日間、
二人だけで旅行に出る。








旅先で園子は疲れが出たのか、
寝込んでしまい、
セックスするどころか一日中寝ている園子を、
越智はかいがいしく介抱してくれた。








園子が、
恋する女として好きな人とすごしたのは、
その四日間のみ。








その二ヶ月後、
園子はようやく越智と肉体的に結ばれるんだけれども、
その瞬間に、
恋は終わったという。







なぜ終わったのか、
結局、結婚できない運命なんだということに、
園子が絶望したということなんだけど、









その後も二人は、
結婚こそしないけれども、
時々会ってセックスする仲を何年も続けるが、








園子は、
越智が他の女性とセックスしていると知っても、
嫉妬しない、








なぜなら、









恋していた時は妬けたけど、
今は恋はないから。









でも、
愛はあるのよ・・・









そう言いつつ、
園子は、
お金をとって毎晩違う相手とセックスする娼婦になる。









越智は、
一度だけ、
子どもを産もうと言ったけれど、
園子は、








「ほしくないわ」







と断る。









たぶん、
恋をしていた時なら、
すぐにでも、という気になったんだろうけど、
一度冷めてしまった恋心を燃やすことは、
不可能だったにちがいない。









・・・

越智と園子が結婚できなかったのは、
越智には20歳年上の未亡人の愛人がいて、
絶対に手放してくれないからなんだけれども、









たぶん、
そういう事情がなかったとしても、
やっぱり園子は幸せにはならなかった気がする。









てゆーか、
そういう事情がなかったら、
そもそもこんなに長続きしていたかどうか。








男と女の運命は、
生まれた時から決まっていて、







例えば、
この人とはコップ一杯分の愛、








あの人とはバケツ一杯分の愛、








そんな風にあらかじめ決められた愛情の容量を、
短い時間に激しく愛し合ってあっという間に使い切ってしまうか、
ゆっくりのんびり、一生かけて少しずつ使っていくか、
それだけの違いなんじゃないか、
そんな気がしている。










だから、
愛の容量が少ない人とは、
三日間愛し合っただけで、
あっけなく終わってしまうこともあるし、









同じくらいの愛の容量しかない相手でも、
毎日職場で顔を合わせてにっこり笑ってあいさつする、くらいの間柄だと、
30年間波風たてず、
続けることだってできるのだ。









・・・ということで、本日の結論 :







運命に逆らわず、
するべき人とするのがおとなの恋。








Victoriaでした。






Victoriaの「おとなの恋」シリーズはまだ始まったばかりですが、
いったんここで終了し、
次回からは新たなタイトルでスタートします。
お楽しみに〜







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