ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part 5  杉山正明「クビライの挑戦」

こんにちは。Victoriaです。

2012/12/02 京都大学百周年時計台記念館で開催された、
ライフネット生命保険の出口社長に歴史を学ぶ 13世紀の世界」講義録のまとめ、
今回は、
講義の中で出口社長が推薦なさっていた、
杉山正明「クビライの挑戦」をご紹介。

本書は、
「モンゴルによる世界史の大転回」という副題がつけられている通り、
モンゴルを「野蛮な破壊者」とみなす、
従来の西欧中心・中華中心の歴史観に真っ向から異議を唱え、











通商帝国・大モンゴルが、
世界史を「プラスの」方向へと変えたのだ、
という視点で書かれている。









今日は、
まず、
杉山正明氏の歴史観が語られている、
第1部「あらたな世界史像をもとめて」を読んでみた。









まず、
第1部の章立てをご紹介すると、


  1. モンゴルとその時代
  2. モンゴルは中国文明の破壊者か
  3. 中央アジア・イランは破壊されたか
  4. ロシアの不幸は本当か
  5. 元代中国は悲惨だったか
  6. 非難と称賛
  7. 世界史とモンゴル時代






ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ」シリーズの、
講義の後の質問コーナーで、
昔はヨーロッパより、
イスラムやモンゴルの方が文明が進んでいたということが、
どうもよくわからないという質問が、
毎回出るんだけれども、









私も、
Part1からずっと「ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ」シリーズを聞くようになって、
ようやく、
世界史というのは、
ヨーロッパ中心に回っていて、
イスラムやモンゴルなんていうのは、
辺境だ・・・というのは間違った思い込みだということがわかってきたところで、








日本人に限っていえば、
やっぱり、
明治時代からの、
西欧に追いつき追い越せ政策のトラウマが大きいんじゃないかと思う。








日本=遅れてる=アジアは遅れてる
西欧=進んでる=昔からヨーロッパは偉かった、みたいな・・・








たしかに、
19世紀の時点での西欧というのは、
日本を含むアジアと比べてかなり進んだ社会だったかもしれないけど、
だからといって、
ずーっと前からそうだったわけでは決してなく、
ヨーロッパが世界の辺境だった時代も実は長いんだけれども、








どういうわけか、
モンゴルは、
ヨーロッパからも中国からも野蛮人扱いされてきて、












たぶん、
あれだけ短時間の間に征服するには、
モンゴルと他の国との間に、
圧倒的な力の差があったといういうことだから、
負けた時のトラウマがきついんだと思う、
















例えば、
ロシアや中国は、
モンゴルが活躍した後の時代の国の状況が悪く、
それを全部、








モンゴルがメチャメチャにしていったから、
国が荒廃したのだ









と説明していて、









いったん、
そういうイメージが定着してしまうと、
どんどんモンゴル=野蛮というイメージがふくらんでいって、









それは、
意図的にやった部分もあるだろうし、
イメージが一人歩きした部分もあると思うんだけど、











杉山正明氏は、
それらの偏見・誤解について、
歴史的事実に基づいて、
ひとつひとつ論破なさってます。











たとえば、
モンゴルに攻略されて、
南宋杭州はダメになったと言われているけれども、










実際は、
モンゴル到来後、
ますます杭州は栄えており、
状況はモンゴルによる「征服」というよりむしろ「接収」といったほうがよく、









中央政府の機能がなくなって、
すなわち、
首都でなくなってからも、
なおかつ繁栄を極めた杭州は、
世界史上、はじめて、
政治抜きの経済繁栄がされた希有なケースで、
そこに注目することで、
モンゴル時代を新しい視点で読み解くことができるのではないか、と述べておられます。











思うんだけど、
歴史を語るという行為は、
国のイデオロギーと強く結びついていて、










政権の正統性を主張するために、
ちょっくらねつ造するなんて、
常識で、










たぶん、
日本や中国を含め、
どこの国でも多かれ少なかれしていることなんだけど、










モンゴルの人たちというのは、
あんまり、
イデオロギーとか、
抽象的な思想みたいなものに、
興味がない人たちなんじゃないか、









だから、
自分たちの歴史を語ることに、
あまり、
情熱を傾けてこなかったんじゃないか、










モンゴルでは、
運と実力さえあれば、
誰でも政権に取り立てられるチャンスがあり、









人種・言語・宗教・文化の違いに、
ほとんどこだわっていないんだけど、









これは、
あえて差別をなくしたというよりも、








気にならないから、
スルーした部分が大きいんじゃないか、









言い換えれば、
モンゴルの人たちというのは、
驚くほど実務的で、










言葉を使った思想あそびみたいなものに、
価値を置いていなかった、










だから、
自らの正統性を主張するために、
声高にイデオロギーを語るということをしてこなかったため、











気候変動がもとで、
あっという間に帝国が瓦解してしまうとともに、
モンゴル人は元通り、
草原のかなたへと消えてしまい、










残された現地の人々の間には、
モンゴル人に征服された思い出だけが残された・・・











それで、
モンゴルの人たちにとっては、
ちょっと割に合わないみたいなことが起こってるんじゃないか、









第1部を読み終えて、
そんな印象を持ちました。












征服された人たちが、
屈辱的な思い出を強烈に覚えているというのは、
すごくよくわかるんだけど、












例えば、
私の実家のある地方は、
織田信長にコテンパンにやられた歴史があるんだけれども、









田舎のお年寄りは、
自分の家族の歴史は、
せいぜい3代くらい遡って語れればいいくらいなのに、
なぜだか、
信長にやられた時の話は、









ばあちゃん、
ホンマに見たんか???








と、
つっこみを入れたくなるくらい事細かに知っており、






いえいえ、
もちろん、
見たはずはないんです、
だって、








ばあちゃん、それ、
500年くらい昔の話やろ・・・???








・・・ということで、本日の結論 :









人間は、
自分のご先祖さまが征服された話は、
ゼッタイに忘れない生き物である。












モンゴルが悪く言われるのは、
強すぎたからなのよ・・・たぶん・・・









Victoriaでした。



・・・

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ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part5 まとめ - Victoriaの日記



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