ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ Part 5 (50) マルコ・ポーロは実在するか?

こんにちは。Victoriaです。

2012/12/02 京都大学百周年時計台記念館で開催された、
ライフネット生命保険の出口社長に歴史を学ぶ 13世紀の世界」講義録のまとめ、
今回は、「マルコ・ポーロは実在するか?」








さて、
ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ」の講義を聞く醍醐味は、
教科書には書いてない歴史的事実を知ることができること、











特に、
講義の後の懇親会で、
出口社長の「ここだけの話なんですが・・・」が絶好調となり、
びっくりな事実が次から次へと飛び出し、











歴史の先生の講義は、
教科書に沿った話よりも脱線話のほうがスイスイ頭にはいる











という法則が、
ここでもあてはまることを、
まざまざと思い知らされること多数。











今回の話も、
そういう「ここだけの話なんですが・・・」で、











なんと!










マルコ・ポーロという人間は存在しなかった!!!













えっ?
本当ですかあ???











受験勉強でも、
普通に覚えましたが・・・











まずは、
落ち着いて、
山川出版社の世界史用語集を見てみましょう。

世界史B用語集 改訂版

世界史B用語集 改訂版

マルコ・ポーロ : 1254〜1324 イタリアのヴェネツィア出身の商人・旅行家。父・叔父に従って1271年出発し、陸路中央アジアを経由して75年大都に到着した。以後17年間クビライに仕え、90年泉州を出発し、海路イル・ハン国を経て95年に帰国した。96年ジェノヴァで捕らえられ、獄中で「世界の記述」を口述した。

「世界の記述」=東方見聞録 : マルコ・ポーロ旅行記ジェノヴァの獄中で1296〜98年に口述した旅行談を、ルスチアーノが記述したもので、99年頃に完成した。13世紀の中央アジア・中国・南海を詳細に記述し、日本をジパングとして紹介した。西欧人の東方に対する関心を高めた。









ちゃんと、
生年・没年まで書いてあるし、
「東方見聞録」が実在することは確かなんだから、
もし、
マルコ・ポーロが実在しないのであれば、
誰がこの本、書いたんでしょう???








・・・


まず、
時代背景から見てみると、










マルコ・ポーロがクビライに仕えたといわれる時期(山川の用語集によれば、1275〜92)、
ユーラシア大陸を、
陸路・海路を使って、
人々が自由に行き来できるようになっていたことは確か、









クビライは、
商人を保護するため、
海賊・山賊を見つけると厳罰に処していたので、
治安も極めて安定していた。











なので、
マルコ・ポーロ本人かどうかは別として、
誰かがイタリアからやってきて、
クビライに会ったという事実は本当らしい。











次に、
マルコ・ポーロという人物が存在したかどうかだが、
ヴェネツィア公文書館には、
マルコ・ポーロの「遺産文書」が確かに残されている。









だから、
マルコ・ポーロという人間は、
全くの架空の人物ではない。











問題は、
ヴェネツィア公文書館に記録の残るマルコ・ポーロと、
クビライに仕えたといわれるマルコ・ポーロが、
同一人物かどうか?という点で、










出口社長によると、
私たちが信じているマルコ・ポーロなる人物は、
おそらく存在しなかった。










杉山正明モンゴル帝国の興亡 上」によると、

モンゴル帝国の興亡<上> (講談社現代新書)

モンゴル帝国の興亡<上> (講談社現代新書)










そもそも、
マルコ・ポーロという名が、
決して珍しくはなく、
イタリア人としてはごくありふれているので、
当時のジェノアに、
マルコ・ポーロが複数いてもおかしくない。











また、
「東方見聞録」に書かれていることと、
他の歴史文献を照らし合わせると、
いくつも、
紛れもない事実と言わざるを得ない記述があって、










その中には、
クビライの身辺に付き従っているものでなければ、
とうてい知ることができなかった事実もあるので、
実際にクビライに仕えた誰かが語ったということは確かだが、











問題は、









他の歴史文献に、
マルコ・ポーロの名が一切出てこない。









もし、
その場に、
マルコ・ポーロがいたのなら、
当然、
他の歴史文献に記録が残っていなければならないが、
それが一切ないという。









例えば、
マルコ・ポーロが、
帰路、クビライの元からフレグ・ウルスのもとへ、
お嫁入りするモンゴルのお姫様を送り届けた話は有名だが、










その時、
付き従った3人の使いの者の名前は、
「東方見聞録」に出てくるものと、
ペルシアの史書に出てくるものとが完全に一致するし、
前後の事情も完全に同一だという。








ただ、
マルコ・ポーロ一家の名前(マルコ+マルコ父+マルコ叔父)だけが、
ペルシアの史書には全く出てこない。










こういうことが他にもたくさんあって、











内容が詳しくて正確であればあるほど、
他の歴史書とつき合わせてみることが可能なのだが、
どこにも、
マルコ・ポーロの名前は出てこないのだという。










これらの事実を元に、
杉山正明氏は、
「東方見聞録」に書かれていることの元となる体験をした人物が、
いたことは間違いないが、
ちまたで信じられているように、
それがヴェネツィア公文書館に記録を残すマルコ・ポーロと、
同一人物だったかどうかは、
大いに疑問だと結論づけている。










なるほど・・・










なんといっても、
13世紀の話、
何かのはずみで、
マルコ・ポーロという名前が、
一人歩きしたとしても、
何の不思議もないわけですが、












では、
「東方見聞録」は信じていいのかどうか、
さらに調べていくと、











杉山正明氏によれば、












マルコ・ポーロ旅行記と称する写本は、
ヨーロッパ各地に、
それこそ山ほどあり、











私たちが今日読んでいる「東方見聞録」は、
歴史家たちが、
各地に散らばる写本をつき合わせ、
「きっとこうだったのだろう」という想定のもとに作り上げた「完本」なのであって、
もともと、
これが「東方見聞録」の原本です、という決定的な一冊が、
存在したわけではない。










つまり、
マルコ・ポーロも「東方見聞録」も、
存在自体は確かだが、
誰が書いたものなのかは、
実はよくわかっていないということで、











このまま、
世界史の時間にマルコ・ポーロ=「東方見聞録」と教え続けていいんでしょうか???











・・・


さて、
「東方見聞録」が、
誰の経験に基づいて書かれたものなのかは、
よくわからないとしても、











15世紀になって、
ヨーロッパで活版印刷が広まり、
「東方見聞録」が不動のベストセラーの座にあったことは間違いない。











愛読者には、
こんな人も・・・











コロンブス












コロンブスは、
1485年版の「東方見聞録」を、
歴史的なアメリカ大陸発見の旅にも携えていたそうで、











現物の写真、
みつけてきました。

杉山正明モンゴル帝国の興亡 上」p16に載ってます。










余白をご覧いただくと、
コロンブス自身による書き込みがあり、











コロンブスが、
航海への予習(?)として、
「東方見聞録」を読み込んだことがわかる。











実は、
私たちが信じているように、
コロンブスは、
金の国=ジパングを求めて出航したわけではなかった。










彼は、
イスパニアの女王イザベラから、
大カアンにあてた書簡を預かっていて、











「東方見聞録」で大都の記述を読み、
巨万の富(中国の話は何でも単位がでかい)にあこがれたコロンブスは、
大カアンの国との交易ルートを開拓すべく、
西へ西へと向かい、









結果的に、
人類史上最大の征服=アメリカ発見となって、
世界史が大きく動いたわけだけど、










コロンブス自身は、
死ぬまで、
自分がたどりついたカリブ海の島々を、
中国だと信じて疑わなかったという。









こういう話を聞くと、
マルコ・ポーロが存在したのかどうか、とか、
ホントは誰が「東方見聞録」を書いたのか、とか、
実は、
どうでもいいんじゃないか、











むしろ、
どこの誰ともわからない、
複数の無名の人たちが、










あちこちで語った話が、
「東方見聞録」という形でひとつになり、












150年たって、
なお、ベストセラーで読まれ続け、
コロンブスはじめ、
多くの冒険野郎の想像力をかきたてて、
大航海時代につながったと考えたほうが、











なんか、
夢があっていいよね〜♪











歴史は権威のあるエライ人たちだけが作ってきたものではない。











Victoriaでした。



・・・


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