ライフネット生命の出口社長に歴史を学ぶ　Part 3　（８）　玄奘の奇跡

こんにちは。Victoriaです。

2012年3月25日、キャンパスプラザ京都で行われたライフネット生命保険の出口社長の講義、
今回は、７世紀初期のインドのお話。

さて、
男子の間で今も根強い人気を誇る歴史物語といえば、

ちょっとググってみただけでも、

と、
物語だけでなく、
アニメ、
マンガ、
ゲーム・・・と、
出てくる、出てくる、

作り手と読み手の両方の想像力を、
かきたててやまないスケールの大きいお話だからか、

出版業界も、
ゲーム業界も、
おかげさまでいい商いができて、
孫悟空さまさまって感じなんだけども、

今回は、
ちょっとした時代のズレがあったら、
西遊記は誕生していなかったかもしれないというお話。

・・・

子ども向けの物語では、
孫悟空が主人公になっている西遊記は、
唐の時代にインドへ渡り、
仏教の経典を持ち帰った玄奘三蔵がモデルになっていて、
元本は『大唐西域記』。

玄奘がインドへ行ったのは、
６２８年。
１６年間インドに滞在し、
６４５年帰国。
６６４年で亡くなるまでの間に、
『大般若経』『般若心経』などを翻訳、
中国だけでなく、日本の仏教界にも大きな影響を与えた。

旅の記録をつづった「大唐西域記」は、
玄奘自身の著作。

玄奘がインドへ行こうとしていたころの中国は、
隋が衰え、
唐が建国されたばかりで（唐の建国は６１８年）、
国内が安定していなかった。

仏典の研究にはインドへ行かなければと思い、
唐王朝に出国を願い出たが、
許されず、
密かに出国する。

一方、
そのころのインドの情勢はどうだったかというと、

６０６年、ハルシャ・ヴァルダナがヴァルダナ朝を創始、
グプタ朝が滅んでから（５５０年頃）、
分裂状態にあった北インドを統一し、
北インド一帯がまれに見る安定状態にあった。

なぜ、「まれに見る」と言ったかというと、
ハルシャ王が６４７年に没すると、
ヴァルダナ朝は急速に衰え、
北インドは再び群雄割拠の不安定な状態に戻ってしまったからである。

ハルシャ王は、
仏教に帰依、
唐からはるばるやって来た玄奘を保護し、
進講させてもいる。

玄奘がインドを去ったのは６４５年、
その２年後の６４７年にハルシャ王が亡くなり、
ハルシャ帝国は瓦解。

玄奘が出国した頃は国内が不安定であった唐は、
彼が帰国した時には安定を取り戻しており、
唐の皇帝、太宗の命を受けて教典の翻訳にあたった。

玄奘は国禁を破ってインドへ渡ったわけだが、
太宗は彼の業績を高く評価したので、
そのことをとがめられることもなかった。

仏教の経典が中国へ渡るためには、
もちろん、玄奘のたぐいまれなる能力が必要だったわけだが、
それ以上に、
時代のタイミングによるところが大きかった。

北インドの平和がたったの４０年しか続かなかったことを考えると、
玄奘の生まれるのが、
あと数年、早くても遅くても、
歴史は変わっていたかもしれない。

・・・ということで、本日の結論　：

歴史に残る偉業を残すためには、
個人の能力だけでなく、
時代のタイミングが必要である。

・・・