浅田次郎 初等ヤクザの犯罪学教室(3)

こんにちは。Victoriaです。

さて、二日連続でご紹介してきました

初等ヤクザの犯罪学教室 (幻冬舎アウトロー文庫)

初等ヤクザの犯罪学教室 (幻冬舎アウトロー文庫)

女が不幸にならないための八ヶ条 - Victoriaの日記
浅田次郎 初等ヤクザの犯罪学教室 - Victoriaの日記
三日目の今日は、「銀行強盗成功のための傾向と対策」です。

浅田次郎直伝 銀行強盗成功のための傾向と対策とは?>


>>犯罪者たちからもっとも畏敬される悪党とは何か、というと、それがたぶん「銀行強盗」でありましょう。

留置場の房内という場所はおそろしくヒマなところでありまして、一日中差し入れの書物を読んで暮らすしかない。

一日や二日のことであればそれも一興のうちでありますが、起訴され勾留延長され、別件で追起訴されたりして何十日もその生活が続きますと、どんなに本好き学問好きの人間でも、しまいには活字を見ただけでげんなりしてしまう。

すると、他に許された行為といえば、同居人たちとの声をひそめた雑談であります。

その中でも決まって三日に一度くらい真剣に討議されるのが、「銀行強盗の研究」であります。

厳重な警戒の目を縫って、この手の犯罪が頻発し、しかも結構成功を収めるのは、かれらがかつて留置場の房内で習得した研究の成果であると、私は信じて疑いません。

彼らが銀行強盗に憧れるのは、ダイナミックでドラマティックでなにしろ恰好がいいからでありましょうが、もっと根本的には、社会の底辺で生まれたか育ったかしたおおくの犯罪者にとって、一種の社会的報復的意義があるという点を見落としてはなりません。

その証拠に、ターゲットの多くは大手の銀行や信用金庫で、ずっとねらいやすいはずの郵便局や農協などはあまり目標にならない。

犯罪者はえてしてナーバスで単純でありますから、郵便局とか農協というとたちまち庶民的親近感を感じてしまって、ねらいやすいとは思ってもとてもその気にはなれないものです。

その点、銀行や信用金庫はもともと縁が薄いし、なんとなくそこにある金も「公金」のイメージがある。<<

おおっ、なんとすばらしい分析!
Victoriaも、もしも、毎月定例でけんか腰になってる某銀行が銀行強盗にあったら、犯人には、ぜひお歳暮の品のひとつやふたつ、送らせていただきたいものだと・・・

続きをみてみましょう。


>>襲撃しやすい銀行というのは、もちろん町中の雑多な商業地域などにある銀行であります。

人通りが少ないからといって場末の銀行をねらうのは愚の骨頂で、犯行後、幹線道路を非常線で遮断されてしまえば、もうお手上げであります。

では、渋谷や新宿などの盛り場の銀行がいいかというと、これもあまり感心しない。行員や客の数が多く、設備が整っていることもさることながら、たいていは警察や交番との距離が近いからであります。

交通事故だろうが殺人事件だろうが、いの一番に駆けつけてくるのはたいがい近所の交番のお巡りさんです。

彼らはおしなべて勇敢で根性があります。しかも、すぐに拳銃を抜いて発砲する癖があるのも彼らであります。したがって目標とする銀行と交番の距離は必ず前もって測っておかねばなりません。

もっとも好ましい状況は、ごく近くに交番がありながら、時間によっては不在の場合が多いところであります。

多くの金融機関には、近所の交番や所轄警察につながる非常ベルがありますので、そのホットラインの受け手が不在であるという状況こそ理想的なのであります。

小さな交番のお巡りさんはいったんパトロールに出れば少なくとも15分以上は戻って来ませんから、彼らが出払ったのを見届けてからすぐそばの銀行に飛び込めばいい。気の利いた共犯者に依頼して、町外れで軽い接触事故を起こすとか、とるに足らぬもめ事を起こさせて一瞬交番をカラにする、などというのもかなり名案です。<<

おおっ、銀行強盗は立地が何よりも大事、ということですな・・・


>>次にこれもあらゆる犯罪にあてはまる基本でありますが、近在の警察署の所轄図を十分頭に入れておき、犯行後はすみやかに他の所轄に逃げ込む、ということであります。

日本の警察機構はいわゆる自治体警察でありまして、つまり所管というものは厳正にフランチャイズされた会社のテリトリー区分とよく似ていて、他の区域に越境して勝手に捜査をすすめることは、機構上できないのであります。

かの「かい人21面相」などはこうした警察のウィークポイントをよく心得ていて、重要な行動に出るときには必ず大阪府警兵庫県警の所管をまたにかけています。兵庫でさらった人質は大阪で解放するという具合です。

これをやられるとわが国の警察は必ず指揮権が混乱し、捜査行動が遅滞します。

所管を知るということはすべての犯罪に共通する基礎知識であります。<<

この後、浅田先生は、犯行の日時や目標金額について、実に具体的なアドバイスをお書きになっています。

目標金額については「せいぜい一千万円にしよう」というのが、浅田先生の忠告。

なぜかというと、一千万円というのは、いざ持って逃げるとなると、広辞苑を一冊抱えて走るようなもので、まったく容易ではないからだとか・・・

「金の重みを知る」といいますが、金の重量をあなどってはならないということです・・・

・・・
いやもう、ホントに勉強になりますね。

最後に浅田先生からの金言を一言。
>>私に言わせれば、銀行を襲って一千万円を強奪することよりも、汗水流して働いて銀行に一千万円貯金するほうがはるかに簡単であります。<<

Victoriaでした。

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