Downtown Silver Spring Redevelopment Project(シルバースプリング再生計画)

おはようございます。victoria007です。

さて、引き続きアメリカはメリーランド州、モントゴメリーのシルバースプリングで、中心市街地活性化成功の立役者、メルさんにお話をうかがっています。

メルさんにお話をうかがうまでの経緯はこちら。
シャッター街 - Victoriaの日記
Silver Spring - Victoriaの日記
メルさん - Victoriaの日記
シルバースプリングのバッジ - Victoriaの日記
空きビルの街だったシルバースプリング - Victoriaの日記

ここで、シルバースプリングの歴史を要約すると・・・

戦後は商業の中心として栄えましたが、1970年代には郊外型店舗の登場とともに衰退。
そこで、再生プロジェクトを立ち上げ、2000年代になってからめざましい回復をとげたそうです。

このプロジェクトは官民一体となって進められました。
メルさんはシルバースプリングの行政側の責任者なのですが、メルさんいわく、
「行政はビジネスに直接携わることはできないので、ビジネスがやりやすい環境を整えるために知恵をしぼった」
そうです。

まず、新たにシルバースプリングでビジネスを始めようという企業にたいして、固定資産税・所得税の支払い猶予を認めた。そうすることによって、資金をビジネスで回してもらおうというねらいです。

次に、シルバースプリングでビジネスを始めようとする企業に対して「Green Tape Zone」というのを作った。
これは、英語のRed Tapeという単語に対応する用語として、メルさんが考え出したもので、まず、Red Tapeというのを説明すると、たとえば、新たに店舗を建設しようとすると、やれ建築確認だの何だのって、膨大な量の申請書を書かなければならない。
それをひとつひとつ別々の役所に持って行って認証をうけようとすると、何ヶ月も時間がかかってしまう。
そういう、官僚主義形式主義のことを、英語でRed Tapeというのですが、メルさん達は、これがビジネスの機会損失につながっていると考えた。
そこで、プロジェクトの一環として、新たにビジネスを始めようという人に「ワンストップサービス」を提供しようと考えました。
それがGreen Tape Zoneです。

プロジェクトがこれはシルバースプリングのためになる事業だと思えば、申請書をあちこちに持っていかなくてすむ。メルさん達のところに持ってくれば、最優先ですべての役所に回してくれるというのです。これで、何週間も、時には何ヶ月もかかっていた時間のロスがなくなりました。

あともうひとつ、行政側が行った取り組みとして特筆すべきなのは、住民とのタウンミーティングを頻繁に行ったこと。
「シルバースプリングを何とかもう一度よみがえらせてほしい」
というのは住民の切なる願いではあったのですが、プロジェクトが軌道にのるまでは、一体何が起ころうとしているのか、住民側には見えず、反発も大きかった。
そこでメルさん達は、ひんぱんに街へ出掛けていって、住民と会い、プロジェクトの趣旨を説明し、住民からの意見を聴いたそうです。

「どれくらいミーティングはしたのですか」
という説明に、メルさん
「数え切れないくらい」
と言って笑ってましたが、ものすごい数のミーティングを今でも開いているそうです。

実際、この日、私がメルさんのお話を聞いた会議室もそのために使われていて、説明のための地図や資料が山積みになっていました。そして、私が会議室を出た後、早速住民が入ってきて、今日のミーティングを始めたところを見ました。

メルさんによると、住民は不安な時は何にでも反対するけど、プロジェクトの真意を理解してくれると、つぎつぎとアイデアを出してくれたそうです。そういうアイデアがいくつも実現して、住民にとって住みやすい街作りにつながっているようです。