デンマークの社会保障制度

おはようございます。Victoriaです。

毎日新聞の特集「明日はある・・・か?増税を問う」3回目は「遠くの親 誰が見る」です。

http://mainichi.jp/select/world/news/20101201ddm001040011000c.html

>> 「どちらかが死んだら、残された方は老人ホームに入ることにする」。05年からデンマークに住む銀行員、坂口愛さん(36)=仮名=は一昨年、一時帰国した際、千葉県流山市の実家で父(71)、母(73)と話し合い、こう結論を出した。

 15年前に統合失調症になった2人兄妹の兄(42)は、両親と同居し、引きこもりを続けている。今は両親とも元気だが、万が一、どちらかが倒れたら、どうするのか。

 兄には施設に入ってもらうしかない。だが、残された親が、重度の認知症などになる可能性もある。受け入れ施設が見つからないことだってありうる。「そうなれば、自分が日本に帰国し、介護にあたらなければならない」

 坂口さんとは別の銀行に勤めるデンマーク人の夫(34)と、6月に出産したばかりの長男はデンマークに置いていくしかない。事情を打ち明けると、夫は不満そうに首をかしげた。「親の介護のために、子供がやりたいことをあきらめるのはおかしいよ。日本はデンマークよりはるかに経済的に大きいのに、なぜ社会保障のレベルがそんなに低いのか」

 デンマークでは、訪問介護は24時間対応で原則無料。子供が親を引き取って介護にあたることはめったになく、高齢者でも1人暮らしが普通だ。坂口さんは「日本とは介護のシステムが違い過ぎる。親の老後の世話は最終的には子供が見なければならない、という日本の考え方を夫が理解するのは難しいだろう」と話す。

 国民所得のうち、国民が払っている税金と社会保険料の総額がどのぐらいの割合かを示す「国民負担率」は、デンマークが70%超と世界一高いのに対し、日本は40%弱で先進国の中では下から数えた方が早い。介護など高齢者の世話を同居家族が支えてきたことも大きな理由の一つだ。

 だが、国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、少子高齢化や未婚化の加速などで2030年には65歳以上の高齢世帯のうち37・7%が単身世帯となる。家族頼みの「低負担」を続けるのは難しい。

 04年からデンマークで看護師として働く吉井彩香さん(31)=仮名=は、東京都立川市に母(63)と自閉症の次兄を残してきた。次兄は実家近くのグループホームで暮らしており、週末は母が引き取って世話をしている。3人兄妹の長兄は都内にいるが、家庭がある。母が倒れたら、誰が母の世話をするのか。次兄はどうなるのか。不安は募るばかりだ。

 失業中のデンマーク人の夫(34)は日本への留学経験もあり、介護のため一時帰国することになっても理解してくれるだろう。でも、吉井さん自身は「できればデンマークでの仕事と暮らしを続けたい」と考えている。

 夫の両親は離婚しているが、それぞれ悠々自適の生活を送っており、今後も「息子に頼るつもりはまったくない」という。「『負担増はいやだ』と言っている限り、安心して母を任せられる介護サービスは日本にできない」と吉井さん。日本と北欧のかけ離れた社会保障制度のはざまで、日本人妻の悩みは深い。<<

同じ1面にこんな記事が・・・
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20101201ddm001010008000c.html

 民主党の「税と社会保障の抜本改革調査会」(会長・藤井裕久財務相)の中間とりまとめ案が30日、明らかになった。年金や医療など高齢者向けの社会保障充実に加え、子育て支援など現役世代への支援拡充のため、財源として消費税を「非常に重要」と強調。政府に対し、消費税を含む税制の抜本改革に一刻も早く着手するよう求めている。参院選後、いったん封印されていた消費税増税論議が再燃しそうだ。

 消費税増税を巡っては、菅直人首相が今夏の参院選で「消費税10%」に言及し民主党は惨敗。政府・与党内での論議はストップしていた。素案では、それ以降で初めて与党として増税を提起し、事実上、消費税論議を解禁した。

 改革の方向性として、高齢者の安心感を高めると同時に、子育て支援や雇用対策を通じて現役世代も「受益感覚」を感じられる「全世代を通じた安心の確保」を打ち出し、社会保障番号制度の創設に着手すべきだとした。

 財源に関しては、年金、高齢者医療、介護の高齢者3経費で約10兆円の財源不足があることを指摘。現在の世代の社会保障費の不足分を「赤字国債」という将来世代の負担に求めず、現在の世代の税や保険料で賄う状態に戻すよう求めている。具体的には「国民全体で広く薄く負担する」「安定した税収」との利点から消費税を重視。引き上げの際には社会保障目的税にすべきだとの考えを示した。

 同調査会は週内をめどに取りまとめ、議論の場を政府・与党の「社会保障改革検討本部」(本部長・菅首相)に移す。同本部は年内に政府・与党案を作成し、野党側に協議を呼びかける方針だ。素案には各制度の具体的将来像や消費税幅は示さず、超党派で議論する余地を残した。<<

本日は社説も消費税でした。
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/archive/news/20101201ddm005070112000c.html

 突然起きた危機ではない。消費税引き上げ論議を避けてきた政治家の先送り体質が招いたものだ。その場しのぎの財源が底をつき、基礎年金の国庫負担率50%が来年度は維持できなくなる見通しとなった。責任は与野党ともにある。これまでの無策を猛省し、社会保障制度の抜本改革と安定財源確保に全力を挙げなければならない。

 基礎年金の給付費は保険料と国庫(税金)で支えられている。少子高齢化が進めば現役世代の保険料負担が重くなることから、2004年の年金制度改革で09年度までに国庫負担率を5割に引き上げることが決まった。消費税増税などで安定財源を得ることが前提になっていた。

 ところが、当時の自公政権は財源の改革を先送りする一方、国庫負担率は、36・5%から50%に上げた。財源不足は、財政投融資特別会計の積立金という埋蔵金に頼った。

 その埋蔵金もほぼ底をつき、50%の国庫負担を続けようとすれば、11年度は約2・5兆円が不足するという。国債の増発による穴埋めは、新規発行額を10年度並みの44兆円以内に抑えるという閣議決定があるため容易ではない。

 そこで財務省が提起しているのが、安定財源確保までいったん36・5%に戻す案だ。ただ、保険料や給付金に影響が及ばないよう年金特別会計の積立金を取り崩して穴埋めするのだという。取り崩した分は、消費税増税後に補填(ほてん)するから問題ないとの理屈らしい。

 しかし、積立金は将来の年金給付に充てる貴重な財産だ。新しい制度や財源確保の展望もないまま、「後で返すから」と手を付けることは非常に危険である。後で何とかするという無責任な発想の結末が今の事態であることを忘れてはならない。積立金の取り崩しが何年も続くようだと年金制度への信頼が決定的に揺らぎ、成り立たなくなる恐れさえある。

 国庫負担率の引き下げは、11年度予算編成にからみ、財務省厚生労働省の間で議論されているが、日本の将来にかかわる大きな問題だ。2省庁間で決着を図るような話ではない。菅政権が最優先で取り組むべき課題なのだ。

 年金制度の抜本改革を唱えながら政権交代を果たした民主党である。野党に協力を呼びかける前に、まず自分たちがどのような制度をいつ実施したいのか、一刻も早く具体的な計画をまとめる責任がある。自民、公明両党も、自らの無責任が引き起こした危機だということを十分認識しなければいけない。

 団塊世代への年金給付が間もなく本格化する。政治の駆け引きに時間とエネルギーを浪費している余裕などないはずだ。<<

Victoriaでした。