夜這いの民俗学・夜這いの性愛論(1)

こんにちは。Victoriaです。

さて、ひさしぶりに、この方の本を読んでみました。

夜這いの民俗学・夜這いの性愛論

夜這いの民俗学・夜這いの性愛論

2000年に91歳でお亡くなりになったのですが、
ご存命の時から赤松先生の大ファンで、
いろいろと読ませていただきました。
たとえば、

猥談―近代日本の下半身

猥談―近代日本の下半身

とか。

それで、夜這いなんですが、

赤松先生は民俗学者でいらっしゃったので、
たくさん民間伝承なんかを集めていらっしゃったんだけど、
夜這いに関しては、
立派な当事者
でいらっしゃって、

本書も、もちろんたくさんの人から聞いた話満載なんだけれども、
圧巻なのは、御自身の体験談。

後家さんに気に入られて、離してもらえなかっただとか、
女旦那にまんまとはめられて、厄落としに使われただとか、
驚くべき証言満載。

夜這いという言葉は聞いたことがあっても、
実際、どういうものか、ご存じない方もいらっしゃると思うので、
ここで少しご紹介。

1 昭和30年代まで残っていた夜這い
赤松先生によれば、夜這いの風習ができたのは、戦国時代以降だろうということ。
徳川時代には、早くも夜這い禁止令が出されたが、全く効果無し。
明治政府は必死で夜這いをなくそうとするが、大正末までは全国的に残っていたとされ、
昭和30年代まではあちこちで見られた。

夜這いというのは、早い話が、婚姻関係を超えた性的関係を結ぶことなんだけど、
ただの、浮気や遊びとは訳が違う。

例えば、こんな感じ。



「おい、お前、オレんとこのお袋の味、どないや」
「わい、知らんぞ」
「アホぬかせ、お前の帰りよんの見たぞ。月末にオヤジがまた留守するで来てな、いうとったで」


「お前、今晩、うちのネエチャに来たれ」
「ええんか、怒られへんか」
「当たり前じゃ、怒っとったぞ、この頃、顔見せんいうとったぞ、味、悪いんか」
「そんなことないけんど、よう、しゃべるでなあ」
「そら、お前が悪いやろ。何も言わせんように、かわいがったれや」


という感じに、息子が母親や姉の夜這いを取り持ったりするわけ。
狭い家で、だいたい娘は奧に寝ているから、
そこに至るまでにおとうちゃんやおかあちゃんの寝床をまたいで行くわけで、
全部バレバレなのは周知。


性交するだけで、すぐ結婚しようなどというバカは、当時いなかった。
性交はいわば日常茶飯事で、それほど大騒ぎすることではない。

もちろん、田舎でも遊ぼうと思えば遊ぶところはいくらでもあったが、
タダで遊ばせてくれるところはない。

昔ながらの夜這いは、男も女もお互いにタダで堪能するまで遊べる習俗だったので、
近代社会に至るまで根強く残ったわけである。



2 夜這いと結婚の違い

昔、結婚は労働力の問題であった。
体が丈夫でよく働くヨメをとってこそ、一家は繁栄する。

一方、夜這いは、宗教や信仰に頼りつつ、過酷な生活をしいられた村が存立していくためになくてはならない別の機能を担っていた。

当時、避妊具はなかったので、夜這いの結果、当然、子どもが生まれる。

子どもができたとしても、自分の子どもとして養うのが男のつとめだと考えられていたので、
「こいつ、オレに似とらんやろ」
などといいながら、赤ん坊を膝にだいてあやすおとうちゃんの姿はそこらじゅうで見られた。

まだ娘が結婚していなければ、
生まれた子どもはいつのまにか村のどこかで、育てられていた。

結婚自体、今に比べると昔はずっと自由だった。

田舎では、結婚は夜這いの延長みたいなもので、
同棲したからといって必ずしもお互いを性的に独占したわけではなかった。

別れるのも簡単で、女が風呂敷包みひとつで家を出て行く。

離婚だなんだと騒ぐこともなかったので、
三婚、四婚も珍しくない。

夜這いというのは、村内婚がほとんどであった時代に、
村をあげて若者に対して性教育を施すという側面もあり、
「どうすれば楽しい性生活ができるか」
ということに徹していた。

だから、結婚したからには、たとえ性的に不整合であっても、
一生離れてはいけないなどということはない。

女も男も「百人斬り」を基準にしていて、百人相手をして一人前、
千人になると盛大に祝宴を開いて「千人供養」をしたという話もある。

なんともあっけらかんとして、明るいのが、
日本の伝統、夜這いなのである。


3 若衆入りとその儀式


夜這いは若衆入りと同時に始まる。
男は13歳になると若衆仲間に入る。
若衆というのは、村の行事、祭りなどに中心となって活動する現役。
結婚すると出るが、小さい村だと人数が足りないので、40歳くらいまで出られない場合もある。

女は13歳くらいになって初潮があると娘仲間にはいる。
夜這いの相手になれる年齢は、村によって違っており、
初潮があればよいところもあれば、陰毛がはえるまで許されないところもある。

男の最初の夜這い相手、つまり筆おろしは、圧倒的に後家さん相手が多い。
相手は、くじ引きなどで、好みに関係なく決められる場合もある。
とにかく、相当な年長者がいろいろと具体的に手取り足取り教えてやるわけである。

若衆は、後家さんの精進落としの相手にされることも多い。
夫に死なれた後家さんは、
夫の死後、初めての性交である精進落としが終わってから、
公に性生活を復活できたのである。

あるいは、女の厄落としの相手になることもあった。
33歳は女の厄。
ここで厄落としをしておかないと、家族に不幸がふりかかると信じられていたので、
いわば、そのためのセックス奉仕が若衆の任務でもあったわけである。

筆おろしをお寺の仏様の前で行ったり、
あるいは参詣とセットで厄落としをしたことからも、
夜這いというのが、宗教と非常に近い位置にあったことがわかる。



4 マラカケ
若衆入りした若者たちの間では、いろいろ鍛錬が行われていた。

その中に、マラカケがある。

これには、茶瓶カケ、土瓶カケ、鉄瓶カケの三段階があって、
もちろん鉄瓶が最も重い。

これらをかけることによって、その男の底力がわかる。

また、マラのソリ具合もいろいろあって、
天を突くようなハネソリ、中段のダシソリ、横一のサゲソリとあり、
これで、若衆はマラカケ競争をやったそうである。

(タオルをかけて競っているのは見たことがあるが(どこで・・・?)、
鉄瓶カケなんて、初めて聞いた。
そんな強い人、いるの???

赤松先生いわく、男根は使わないと太く延伸しない。
マスでは太く成長はしないので、実地で使用すべしとのこと。


そうなんですか・・・???



5 夜這いは社会のインフラ

一口に夜這いといっても、村によってその決まり事は様々で、
抜け駆けすると、つるし上げを食ったり大変である。

おそらく、村の人口などにより、最も平等に性を共有できる方法が取り入れて来られたためだと思われる。

大きく分類すると、
1 村の女なら、みんな夜這いしてよい
2 未婚の女に限る
の二つに分かれる。

また、
1 すべての男にオープン
2 自分の村の男オンリー
の二つがあり、
この掟をやぶって隣村の女に夜這いをかけたりすると、
リンチされたらしい。

同じ村の男同士でも、
夜這いしてみたら、先客がある場合もある。
そういう場合は、嫌がらせに履き物を隠したり、
あるいは出てくるのを外で待っていて、ボコボコにしたりと、
ケンカもあったようである。

夜這いと簡単に言うが、昔は街灯などない。

真っ暗闇の中、場合によっては何キロも離れた家へ、わざわざ出かけていくわけである。

途中で川に落ちて死んでしまったり、
腹が減って倒れたり、
それこそ命がけであったようである。

熊野地方では、夜はどこの家も戸締まりをせず、
夜這いの若衆がお腹がすくので、
おひつには、必ず夜這いの若衆のためのご飯を残しておくのがならわしだった。
これを残しておかないと、後から仕返しされたらしい。



ちなみに、近所の神社でも、
昭和30年代くらいまでは、祭りの後は無礼講で、
そこらへんの茂みなんかで、みんな自由に楽しんでいたというのを、
直接聞いたことがある。

無礼講なので、
夫の目の前で妻が他の男に抱かれていても、怒るどころか
「アカンわ、それではうちのかあちゃん悦ばんで。もっと足を持ち上げんかい」
というような指南をしたということも聞いたことがある。



しまった、生まれるのが遅すぎた・・・



草食系だのセックスレスだの、
セックスそのものが「なくてもいいもの」になりつつある感があるが、
それは、やっぱり、初体験でみっちり講習受けてないからなのでは・・・

セックスもテクニックであるからには、
それなりの手ほどきが必要。

今さら、学校教育でノウハウ伝授するのはムリだろうから、
やっぱり、塾にまかせるしかないだろうなあ・・・

Victoria、塾のノウハウだけはばっちりですけど、
お国の少子化対策のためにひと肌脱いで、
なんなら、講習、請け負いましょうか・・・???




Victoriaでした。