恋愛以上

こんにちは。Victoriaです。

ロックシンガーのフレディ・マーキュリーは、
生涯に一度だけ、クラシックのオペラを歌っている。

Barcelona

Barcelona

アルバムタイトルになっている「Barcelona」は、
バルセロナオリンピックの開会式で歌われた。

フレディはもちろん、モンセラート・カバリェと共に歌うはずだったが、
その前年に死去したため、実現ならず。

このコラボレーションは、フレディがカバリェの歌に一目惚れしたことから始まった。

二人が初めて会ったとき、
フレディは約束の時間が近づくと、部屋を行ったり来たりしてまったく落ち着かず、
ようやく到着したカバリェと握手した手はとても冷たかったと言う。

「私の手も冷たかったんだけど、
フレディのほうがもっと冷たかったの。
それで、二人とも、相手に何かを期待していたんだっていうことがわかったわ」
とカバリェは後に述べている。

最初、フレディは、もしもカバリェが乗り気なら、
一曲デュエットできないかな・・・くらいの気持ちで、
彼女のために作った曲を披露。
しかし、たちまち意気投合してしまった二人は、
その場で歌い始め、気がつくと朝の6時。

「もう、そろそろお別れしなければなりません」
とフレディが言うと、
「あら、あなた、私に帰ってほしいの」
とカバリェ。
「いえ、そういうことではなくて、ずっといてほしいんですけど、
あなたの飛行機の時間がありますから」

「ロックミュージックって、アルバムに何曲くらいいれるものなの?」
「10曲くらいです」
「じゃあ、私たちも10曲歌いましょう。
早速、10曲、作ってくださる?」

ということで、アルバムを作ることがとんとん拍子に決まった。

「Barcelona」は、カバリェの故郷がバルセロナなので、
その街のために曲を作ってほしいと頼まれ、作ったもの。

曲ができると、バルセロナでコンサートをすることになった。

クイーンのコンサートでは絶叫しまくるフレディだが、
今回はクラシックなので、抑え気味にしなければ・・・と思っていたが、
実際、ステージに上がってみると、
ソプラノ歌手のカバリェの声量もすごい。

「おおっ、これは、負けてはいられない」
と、フレディも全身を楽器にして、大絶叫。

たった二人で歌っているとは思えない迫力である。

二人でステージに立つことが決まったとき、
カバリェは、ちょっとためらったそうである。
「私は体が大きいし、年上だし・・・」
それを聞いて、すかさず、フレディは、
「音楽に年齢は関係ないですよ」
と言ったという。


フレディとカバリェは、足かけ一年、レコーディングやコンサートで共演したが、
その間、フレディの気の使い方は、大変なものがあったようである。

録音スタジオには、いつも必ず彼女のために花を飾り、
彼女が使うかもしれないからと、スタジオのトイレまで改装させた。

コンサートは大盛況。

のちに、この一年を振り返り、カバリェは、
「こんなに、幸せで、美しい思い出はない。
一生忘れることはないだろう」
と語っている。


フレディは、カバリェについて、
"I love music. She is the music."
(ボクは音楽が好きだし、彼女は音楽そのものだから)
と言っていた。

まさに相思相愛のふたり。
「音楽上で、私たちは結婚しているようなものだった」

フレディがカバリェとコラボレーションする時のいきさつについて語ったインタビューはこちら。


コンサートの映像を見ると、フレディが心からカバリェのことを尊敬しているのがよくわかる。

クラシックはいわば畑違いではあったわけだけど、

だからといっていつものフレディらしさがなくなっているわけでは全然なく、

むしろ、ふだんのメンバーとは違うミュージシャンとコラボレーションしたことで、

フレディのエネルギーや音楽性が、

新しいかたちで発現しているといっていい。

このことについて、フレディはインタビューの中で、
「ボクはいつだってステージ上で自分以外の役を演じてきたんだ。
その時はその役になりきっているけど、
終われば本来の自分に戻るのさ。
だから、オペラであっても、その役を演じているわけだから、
ほかのステージと特に違うことは何もないよ」
と語っている。

ロックであるとか、クラシックであるとかいった形式にとらわれず、

与えられた枠の中で自由自在に動くことができ、

相手に合わせて、自分の音楽性まで変えることができる才能のことを、

天才と呼ぶのだろう。



音楽的には、クイーンのメンバーを別にすれば、
こんなに深いところまでわかり合えた相手はおそらくいなかっただろうと思う。

いわば、恋愛以上の愛がそこにはあった。

そして、おそらく、そういう関係は、

二人がミュージシャンだったからこそ、築けたんだと思う。

音楽って、一瞬にして魂と魂をつなぐ力がある。

ドラムの音が子宮にまで響くということを以前書いたけれど、
本当に気持ちのいいセックス (10)番外編 女性のオーガズムってどんな感じ? - Victoriaの日記

聞いているだけでも、トランス状態になることがあるくらいだから、

いっしょに演奏した時の、魂の共鳴は、

一度経験してしまうと、忘れられない。

音楽を演奏する悦びを知った人は、

生涯演奏し続けたりするものだけど、

それは、演奏している時に感じる高揚感が

何物にも代え難いからだろう。

音楽にメッセージ性を感じる人もいるけれど、

私は、それには懐疑的だ。

フレディもそう考えていたようで、
「ボクは音楽で世界を変えたいとか思ってないんだ。
ボクの歌に隠されたメッセージなんてない。
お客さんには、楽しんで帰ってもらえたらそれで十分だよ」
と述べている。
(原文) I don't want to change the world with our music.
There are no hidden messages in our songs
I like people to go away from a Queen show feeling fully entertained, having had a good time.


音楽って、もっと原始的なもので、
人間に精神というものが宿る以前から存在したと思う。

だから、自分の意志とは全く関係なく、
リズムに揺すぶられていると、
魂が目覚める感じがするんだろう。


フレディとカバリェのバルセロナはこちら。

魂を揺すぶられます。




Thank you, Freddie!
I love music.
And I love rock'n'roll.
It's better than SEX!



Victoriaでした。