田中周紀 「国税記者 実録マルサの世界」 (2)銀座高級クラブの巨額脱税事件

こんにちは。Victoriaです。

国税記者 実録マルサの世界

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さて、本書は「脱税の参考書」なので、
ここで、脱税のしくみについて簡単なおさらいをすると、




税金というのは「所得」に対して課せられ、




所得=収入−経費




なので、




脱税=所得を実際より少なく申告すること。





とてもシンプル。





すると、そのパターンは、

  1. 収入を実際より少なく計上する
  2. 経費を実際より多く計上する
  3. その両方を使う

の3つしかない。




本書では、
所得を一切、申告せず、
所得税法違反で東京地検特捜部に告発されたケースが紹介されていて、






銀座の売れっ子ホステス。





ホステスというのは一人一人が個人事業主で、
クラブを経営する会社と契約して、
接客のプロとしての力を発揮する場を与えてもらっているようなものなので、
当然、確定申告しなければならない。





衣装代からエステ代、タクシー料金まですべて経費として認められるので、
なんでもかんでも領収書をとっておいて、
確定申告ではそれを税理士さんに渡してあとは全部お任せっていうのが普通のパターンなんだけど、
実際は、確定申告しないホステスも多い。



人の出入りが激しい業界で、
お店を短期間で渡り歩くホステスも多いし、
店そのものが、税務調査を逃れるために短期間でつぶしてしまう場合が多いので、
税務署も実態をつかみづらく、
なかなかホステスを脱税で摘発することは難しいのだけれど、





紹介されているホステスの場合は、
本名ではなく、源氏名で作った銀行口座に報酬を振り込ませていたことが、
所得の隠蔽工作だとされた。





3年間で隠した所得は2億1400万円。
脱税額3600万円。




執行猶予のついた懲役10ヶ月、罰金800万円の判決を受け、
「申し訳ないことをしました」
と深々と頭を下げた彼女、
今でもホステスとして銀座で働いているらしい。





・・・


さて、売れっ子ホステスの無申告が税務署にバレなかったのは、
彼女が働いていた会社が、
ホステスの報酬から天引きした所得税を税務署に納めていなかったことにあった。





ひとつの会社を例にあげると、


  • 支払ったホステス報酬 7億9120万円
  • 納めるべき源泉所得税 9379万円
  • 実際に納めた源泉所得税 180万円


源泉所得税の不納付率 98%!





源泉徴収した所得税の一部だけを言い訳程度に納めることを「つまみ納付」というらしいが、
この会社のオーナーは、
なんと、1975年から不納付を続けており、
92年に一度税務調査で発覚したらしいが、
調査に来た税務署員が、店の借金が多いのを見て「がんばってください」と言って帰って言ったので、
「がんばってお金ができたら払って」という意味だと思い、
その後も不納付を続けたと公判廷で述べたらしい。




つまみ納付をするようになったのは、
社長を任せた人物に、
不納付はまずいでしょうと再三注意され、
「だったら、毎月20万円程度納めといてちょうだい」
と言って、しぶしぶ納めるようになったから。






このオーナーの弁護士は、ヤメ検の大物、石川達紘。
懲役2年(執行猶予4年)、罰金2600万円の判決を受け、
今も相変わらず店をつづけてバリバリ働いているという。





・・・


源泉所得税って、預かり金だけど、
手元に現金として残るから、
税務署が何も言って来ない状態が長く続くと、
流用が常態化してしまうっていうのは、わかるなあ・・・





過去最大の源泉所得税不納付を摘発した査察部は大金星だったわけだけど、
日本全国を見渡せば、これは、氷山の一角にすぎないんだろう。






・・・ということで、本日の結論 :




源泉所得税の不納付はバレる。






Victoriaでした。



・・・

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田中周紀 「国税記者 実録マルサの世界」 (1)マルサの正体 - Victoriaの日記