消費税実務問答集 「人格のない社団 VS 公益法人」
こんにちは。Victoriaです。
さて、簿記の勉強もままならないというのに、背伸びして購入してみたこの本。
![消費税実務問答集 消費税実務問答集](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51-ruogCQhL._SL160_.jpg)
- 作者: 児玉 正己(大阪国税局)
- 出版社/メーカー: 清文社
- 発売日: 2010/10/22
- メディア: 単行本
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第6章は「小規模免除」。
こーゆー場合も、あーゆー場合も、消費税は払わなくちゃいけないよ・・・という脅しに充ち満ちたこの本の中で、唯一「こーゆー人たちは払わなくってもいいよ」という免除のお話がのっている、一服の清涼剤のような章です。
ほかは読まなくてもいいから、ここだけはしっかり読んでおかないとね・・・
それで、今日、とても気になったのがこの項目。
<問6−1 人格のない社団が公益法人となった場合の納税義務>
人格のない社団って何だ?
国境なき医師団みたいな響きがしますが・・・
そこで、調べてみました。
1 人格のない社団とは?
ウィキってみたら、まず出たのがこの言葉。
「人格のない社団」とは「権利能力なき社団」とも言う。
責任能力なしってことで、犯罪を犯した人が罪を免れるっていうのはよく聞きますが・・・
社団に権利能力がないということは、責任能力もないということか?
説明を読んでみましょう。
「権利能力なき社団とは、社団としての実質を備えていながら、法令上の用件を満たさないために法人としての登記ができないか、これを行っていないために法人格を有しない社団のことをいう」
???
ようわからんが、簡単にまとめると、要するに、たしかに社団としての実態があり、社団として活動も行っているが、法人としての登記は行っていないと、そういうことだな。
消費税法試験対策 : 「消費税実務問答集」によれば、法人として登記しているか否かにかかわらず、消費税法上は人格のない社団であっても、法人とみなされる。
金もうけとんやろ?せやったら、ちゃっちゃと消費税払えや!
ってことですな・・・
さて、ここまでで本日の調べ学習終了してもよかったのだが、いったいどんな団体が「人格のない社団」にカテゴライズされるのか気になったので、さらに調べてみました。
2 人格のない社団ってどんな団体?
・設立登記前の会社
・町内会
・入会集団(って何のことかいまいち?ですが・・・)
・政党要件を満たさない政治団体
・マンションの管理組合
・サークル
・学会
なるほど・・・
町内会とかサークルはまあおいといて(どうせたいした収入はないので消費税払う必要はないと思われるので)、マンションの管理組合が人格のない社団に入っているというのは驚きだ。
マンションの管理組合って、実はすんごいゼニ持ってないか?
実は私も管理組合の理事長ってのが順番で回ってきて、やったことありますが、そういえば、理事長になった時の最初のお仕事っていうのが、管理組合の通帳の名義変更かなんかだった気がする。
法人じゃないから、通帳を管理組合名義では作れないのよね・・・
毎年、理事長が変わるたびに、名義変更しているみたいだが、あれってどうよ・・・と思った記憶がある。
だって、マンションの管理組合って修繕費の積み立てとかで、結構なお金を定期預金にしてたりするのよ。
あのお金の管理って、トラブルなくどこでもされているんでしょうか?
例えば、入居者VS管理組合のトラブルが起きて、訴訟問題に発展したりなんかしたら、いったいどうなるんだろう?
調べてみたところ、「権利能力なき社団は、権利能力を有しないため、それ自体は権利および義務の主体となりえないにもかかわらず、社団としての実質を備えて活動しており、時として社団の名において権利を有し、または義務を負うがごとき外観を生じる」
いやあ、「・・・外観を生じる」って、なんなんでしょうねえ、この奥歯にもののはさまったような遠回しな表現は・・・
それで、そういう外観を生じるがために、権利・義務の関係をいかに処理すべきかが問題となるわけですが・・・
民事訴訟法第29条に「代表者の定めのあるものは、訴訟の当事者となることができる」と明記されております。
つまり、何も考えずにマンションの管理組合の理事長引き受けたが、あれは時と場合によれば、裁判で被告になる可能性もあったと、こういうことだな?
法律のからくりを知らないと、とんでもない問題に巻き込まれる可能性もあるっていうことですね・・・
次は順番回ってきても、理事長じゃなく、監事か書記あたりでお茶をにごそう・・・
人格のない社団は財産の帰属が総有だそうです。
つまり、共有持分権の大きさを観念できない。
だから、財産をみんなで分けようっていう時に、線引きができないってことかしらね・・・?
さっき、代表者の定めのあるものは訴訟の当事者となることができるっていうのがあったけど、そういうわけで、財産処分に関する代表者設置の規定を持つかどうかで、
・代表者の定めのある権利能力なき社団
・代表者の定めのない権利能力なき社団
の二種類あると、こういうわけです。
よく、法人としての実態はないにもかかわらず、虚偽の法人登記によって設立された「ペーパーカンパニー」っていうのが、会計操作に使われたりなんかしますが、ペーパーカンパニーと、人格のない社団とははっきり別の概念ですね。
それで、この、よくわからないいかにも日本的・前近代的な組織形態からして、いかにもうさんくさいことに利用されそうなにおいがぷんぷんしますが・・・
実際、権利能力なき社団と称して活動していても、主たる組織または個人の存在をかくして活動している事例もあるとのこと。
いわゆる、フロント企業というやつですな・・・
会社法が整備されたのもつい数年前だから、こういうのが温存されていても何の不思議もないのだが、やっぱり、権利能力のない社団っていうのが、一般企業なんかと一見同じような活動しているっていうのは、まずいんじゃないか・・
何かトラブルがあった時に、被害に遭ったものが泣き寝入りになるのでは・・・
と思うが、いかがなものでしょうか?
5 公益法人とは?
さて、ここまでで、人格のない社団についてはおぼろげながらイメージがつかめたので、次は公益法人について調べてみました。
これは私のカンですが、わざわざ「公益」という名前を枕においていること自体、信用ならない。
本当に公益のために活動していることが自明ならば、わざわざ「公益」なんて声を大にして言わなくてもわかるわけで、それをことさらに「公益」と名乗るっていうのは、なんか後ろめたいことがあるからに決まっている・・・
さて、公益法人というのは明治時代からありました。
ありましたが、2008年12月1日に公益法人制度改革3法というのが施行され、2013年11月30日までは新制度への移行のための暫定期間ということで、新制度に則った公益法人と、旧制度のままの公益法人とがただいま混在している模様。
新制度によれば、一般社団・財団法人法というのがありまして、それにより、公益目的でなくても、非営利目的であれば、簡易に一般社団法人・一般財団法人を設立することができるようになりました。
さらに公益目的の法人として税制上の優遇を受けたければ、さらに、公益法人認定法により、公益性の認定を受け、公益社団法人・公益財団法人になる必要があります。
つまり、二つの法律をくぐりぬけたもののみが「公益法人」と名乗ることができると、こういうわけです。
公益法人として認定されるための条件というのを調べてみたところ、
・ 主たる目的とする公益目的事業の費用の比率を50%以上とする
・ 理事や社員から雇用される者に至るすべての関係者に特別の利益を与えない
などがあがっております。
一般に信じられているように、赤字事業でなければ認定されないというわけではないようです。
まあ、赤字事業の定義ってのも、いろいろありますから・・・
ほんまに赤字やったら、公益だろうがなんだろうが、維持は難しいわな・・・
それを毎期毎期赤字をじゃぶじゃぶ出して維持できているっていうのは、どっかからあやしい資金が流れ込んでいるとか、なんか裏があるわよね・・・
6 公益法人として適当でないもの
さて、いよいよ人格のない社団と公益法人の違いは何か、という本題にはいります。
公益法人として適当でないものとしてあげられていたのは、
・同窓会・同好会など構成員相互の親睦・連絡・意見交換等を主たる目的にするもの
・特定団体・職域の者のみの福利厚生等を主たる目的にするもの
・後援会など特定個人の精神的・経済的支援を目的とするもの
つまり、先ほどみた「人格のない社団」としてあげられていたもののうち、例えば、「政党要件を満たさない政治団体」なんかは公益法人として適当でないものに当たるわけです。
まあ、理屈はわかるが、それを誰が判断するんでしょうね?
何か、客観的な基準があるんでしょうか?
結局、そこらへんも政治家の先生方の手腕いかんによるのであれば、よくわからない政治団体なんかもこっそりと公益法人として登記されてたりなんかするんじゃ・・・と思うのはうがちすぎでしょうか?
つい最近も事業仕分けが話題になったばかりですが、多くの公益法人が事業仕分けの対象となった模様。
仕分け対象とする要件としてあがっている項目をざっとみてみると
・国、または独立行政法人から1,000万円以上の公費を受けている。あるいは収入の50%以上を国または独立行政法人からの公費に依存している
・官僚の天下り、あるいは「隠れ天下り」と呼ばれる者を受け入れている
・10億円以上の財産を保有している
・国の事業の行政委託型公益法人であるが、その委託された事業を外部の事業者に再委託している
などがあがっていました。
やっぱり・・・
「公益」という名前をかくれみのにした税金の再分配にすぎないじゃないか!
誰のポケットにその税金流れてんねん?
それでね・・・
独立行政法人については以前も調べたことがあって、この本です。
![特別会計への道案内 特別会計への道案内](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51yOsk88xzL._SL160_.jpg)
- 作者: 松浦武志
- 出版社/メーカー: 創芸出版
- 発売日: 2008/10
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松浦武志著「特別会計への道案内」 第2章 独立行政法人化は行革といえるのか - Victoriaの日記
この本の中で、松浦武志さんがお書きになっていたことは、行革の一環として鳴り物入りで進められた独立行政法人化ですが、実態は焼け太りであると。
かつては国の特別会計で経理された国の機関が続々と独立行政法人化され、「官から民へ」のスローガンのもと、一見ムダが減ったように見えますが、そこは法律のプロの官僚が考えることですから、絶対に公務員が損しないようなからくりが仕組まれております。
例えば、独立行政法人の職員の身分は公務員のままだが、国家公務員定数を定める「総定員法」の対象外なので、人員削減努力の必要はない。逆に増やすことも可能。
「弾力性のある運営」と称して、国からの交付金は「渡しきり費」とされ、各法人の裁量でどう使ってもかまわないし、職員の給料も「独立行政法人通則法」で理事長が決めることとされているので、理事の給料も「お手盛り」で高くできる。
これ以上、独立行政法人を調べていくと、腹が立って精神衛生上よくないので、ここまでで終了。
つまり、まとめると、そういう国民の目をごまかして、よろしくやっている独立行政法人がバックについた公益法人が日本にはまだまだいっぱいあるということで、それに、本当に、公益のためにがんばっている公益法人なんかも混じっていて、まさに玉石混淆の状態。
本日の結論:法律上の形態にかかわらず、活動実態があれば消費税を課するという姿勢は正しい
・・・
いや、ここまでたどりつくのにえらいこと時間を食ってしまった・・・
しかし、世の中一筋縄ではいかないっていうことをかいま見た気がして満足です。
なお、本日のレポートに際しましては、税理士試験受験生の諸先輩方のアドバイスをたくさんいただきましたこと、厚くお礼申し上げます。
もし、間違っている点や足りない点などございましたら(きっとあると思いますので)、ぜひご指導ください。
よろしくお願い申し上げます。