平和の耐えられない軽さ

日本は平和な国だと
いつから言われるようになったのだろう

憲法戦争放棄しているから
永遠に戦争とは無縁の国

強い宗教的な信仰がないから
宗教の対立とは無縁の国

貧富の差がないから
物乞いやスラム街とは無縁の国

一般市民は拳銃を所持していないから
拳銃で射殺される心配とは無縁の国

一年中豊かな水量に恵まれた川があるから
水不足とは無縁の国

国民が礼儀正しく我慢強いから
災害が起きても略奪や暴動とは無縁の国

海外へ行くと
スリやひったくりにあったり
ホテルでお湯が出なかったり
ストで突然電車が止まったりして
日本がいかに平和であるかを改めて思い知らされる

日本人にとって
平和とは
海外に輸出できるくらいの
大きな国の資産であったのだ

経済的に恵まれない国には
経済支援をし

国民の教育レベルが高くない国には
技術支援をし

宗教対立が絶えない紛争地域の問題には
だんまりを決め込み

第二次世界大戦の原爆投下を正しいと信じてやまない国には
原爆のおそろしさを訴え続けてきた

日本人にとって
平和とは
海外に教えることができるくらいの
国の誇れる資産であったのだ


失ってしまってはじめて
平和の耐えられない軽さに気づく

おそらくわたしたちは
幸福の尺度を
経済の理論で測ることにあまりにも慣れてしまっていたのだろう

日本人の食事に欠かせない
お米を作ってきたお百姓さんへの感謝の念を忘れ
地方を切り捨ててきたわたしたち

田舎に原発を造り
地方に雇用を創出したからそれでよしとばかりに
原発の存在すら忘れていたわたしたち


失ってしまってはじめて
平和の耐えられない軽さに気づく

人間にとって本当に大切な
家族といっしょの健康で平和な暮らしというのは
決してお金で換算できるような単純なものではなかったのだろう

電気がなかったら豊かな暮らしができないというけれど
それがこのような悲劇をはらんだものだとわかっていたら
誰だってそんな豊かさはゴメンだと言ったにちがいない

放射能を浴びる危険をはらんだミッションに
誰かの息子
誰かの父親
誰かの兄弟である
たくさんの人たちを送り込まなければならないものだとわかっていたら
誰だってそんな豊かさはいらないと言ったにちがいない


失ってしまってはじめて
平和の耐えられない軽さに気づく

国の平和を心から願い
子どもたちの幸福を願って
働いてきたはずなのに

なぜ
こんなことに・・・

失ってしまってはじめて
平和の耐えられない軽さに気づく




Victoria