貢ぐ理由

こんにちは。Victoriaです。

さて、先日から、
鈴木智彦氏の著作を立て続けに読み、
すっかりヤクザの世界にはまっているVictoria・・・



今日は、これを読みました。

潜入ルポ ヤクザの修羅場 (文春新書)

潜入ルポ ヤクザの修羅場 (文春新書)


極道記者歴15年の鈴木智彦氏が、
なぜ、ヤクザに興味を持ち、
どうやって潜入ルポが書けるまでに至ったかの回想記なんだけど、
随所に生々しい描写がいっぱいあるので、
読んでてとにかく飽きない。



奥付を見たら、
平成23年2月が初版。
平成23年12月に8刷が発行されている。




うん、

こわいモノ見たさの好奇心だけから読んでも、
十分楽しめるからね。





第3章 愚連隊の帝王・加納貢では、
伝説の愚連隊の親分、加納貢に、
ジャーナリスティックな価値があるので近づいていくうち、
いつのまにか鈴木智彦氏が加納貢の生活を全面的に面倒を見るようになり、
最期を看取る関係にまでなっていった経緯が描かれている。





加納貢という人は、
とにかく自分を束縛するものを嫌い、
女に縛られるのを何よりも嫌ったので、
女と付き合う、ということがなかった。




付き合いは、気が向いた時だけ。
少しでも相手の女が熱を上げ、
加納の気をひこうとすると、
一切の連絡を絶ってしまう。





加納を慕って寄ってくる舎弟に対しても、
一切面倒を見ない。




なので、
晩年は誰も寄りつかなくなり、
結局、いっしょにいることに一定のメリットのあった鈴木智彦氏しか残らなかったわけだけど、
何もかもすべての支払いを押しつけられ、
運転手代わりにいいように使われた鈴木氏はいい迷惑で、
ついに最期は老人ホームか病院に入れようとしたんだけど、
それを言い渡した翌日、加納に死なれてしまう。
おそらく自殺だろう。






・・・

加納にいいように振り回され、
ほとほと参った鈴木氏が引導を言い渡そうと待ちかまえていたら、
あっというまに加納がベッドで眠ってしまって、
思ったよりも小さい身体にがく然として涙を流すシーンがあるんだけど、
読んでて、私もジーンとしてきちゃった。





あるよね、
人生でこういう瞬間って。





もうイヤだ、
これ以上我慢できない。
コイツにはもう明日の朝、荷物まとめて出て行ってもらおう・・・






そんな風に固く決心して、
心を鬼にして「大事な話がある」って切りだそうとしたその瞬間に、






「うまい鯛焼きがあったから、買うて来たねん。
食うやろ?」





なんて言って、
こちらの固い決心なんてみじんも感じてませんよボクは・・・みたいなオーラを放たれると、






「せやな、一個いただくわ・・・」






・・・


鈴木氏と加納の場合は男同士だったけど、
女が男に貢ぐっていうのが一般的な組み合わせでしょ?




そういえば、最近逮捕(てゆーか、自首?)した平田信も、
ずっと女がかくまっていたらしいし、
それ聞いても別に何の違和感もないもんね・・・





ああ、一緒に行動するうちに情がわいたのね・・・
特にその関係をやめる理由がなかったから、
15年、あっという間に過ぎちゃったんだろうね・・・





ニュース聞いたとき、
よくあることとして普通に受け止めて、
それで、
なぜ、女は男に貢いでしまうんだろうって考えたんだけど、







たぶんね・・・
鈴木智彦氏も言ってるように、






無防備に自分の前ですやすや寝てる男見てたら、
本気で怒ってたとしても、
許してしまうんだと思うの。





平田信も一切働いてなかったらしいから、
お金は全部女の人がかせいでいたわけでしょ?





一日家にいる平田信が、
じゃあ彼女のために料理して待ってたかっていうと、
違うと思う。





きっと彼女のほうがかいがいしく、
平田信のために尽くしてたはずで、
そういう女の人を見ると、
セックスしてくれる男が欲しかったんだろうとか、
母性本能がくすぐられたんだろうとか、
世話する対象ができて女のほうも生活にハリがあったんだろうとか、
いろいろ言われるけど、






きっと、
そんなにセックスもしてないし、
誰か待ってる人がいるっていう意味で女の生き甲斐になってた部分はあるとは思うけど、
だからってそのことで彼女がすごく幸せだったかっていうとそうでもなかったんじゃないかな。






それよりも、
もっと根源的な何か、
たぶんそれは、
体温のある温かい人間をむげに見捨てることはできないというような、
すごく原始的な理由で、





ごはん食べてる時にふとした拍子で見せる満足げな表情や、
一人でこたつに入ったまんま寝てしまった安心しきった表情なんかを見てしまうと、
むしょうに抱きしめたくなってしまうっていう、
そういう瞬間が彼女を支えていたんじゃないかな・・・






それって、
ペットに対して感じるいとおしい感覚と似てて、
ペットって別にこちらに対して何かしてくれるからかわいいわけじゃなく、
あれは自分が暮らしてる同じ空間に体温のある温かい動物がいるっていうそのこと自体が、
もうすべてをゆるしているっていうか・・・






・・・ということで、本日の結論 :




男はペットである。






ペットを飼っててよかったなあ・・・と感じる瞬間は、
家に帰ってドアを開けたときに、
「待ってましたあ!!!」とばかりに、
しっぽをちぎれんばかりに振って走り寄って来てくれる時。






男にあれされると、
弱いのよね・・・






Victoriaでした。