2012 大学入試センター試験 国語 問題分析

2012 大学入試センター試験 国語について、
予備校の問題分析は以下の通り。


河合塾



<現代文>第1問(評論)は、環境における生命の営みを、他者や「私」の自己意識との関わりから論じた文章。昨年度と比べ文章・設問ともに難化した。なお、問6は小問2問構成ではなく、1問で論の展開を問う設問であった。
著者は河合文化教育研究所所長の木村敏京都大学名誉教授である。
第2問(小説)は、「幸福のシンボル」とされる「たま虫」を不幸な出来事に出会うたびに「見る」という「私」のことを綴った短篇。<古文>本文は江戸の随筆であった。字数は約1150字で、昨年より600字ほど減少した。<漢文>問7まで設問が立てられたのは、センター試験本試験では初めてである。

難易度 やや易化<現代文>第1問(評論)は、本文後半の抽象度が特に高く、筆者の主張が読み取りづらかったであろう。そのために設問も、問5・問6など解きにくいものが多かった。全体として昨年よりも難化した。
第2問(小説)は、同じモチーフがいくつもの場面で繰り返されている文章だが、それらの各場面ごとに独立したかたちで設問が作られているため、傍線部を含む限定された部分を見れば解答が決まるという問題が多くなっている。全体として昨年よりもやや易化した。<古文>本文が、昨年よりかなり短くなり、内容も読み取り易かった。正解を選びにくい設問もあったが、全体としてはやや易化した。<漢文>本文の分量は昨年並みだが、内容は捉えやすく、紛らわしい選択肢もほとんどなかったため、昨年と比べてかなり平易であった。

出題分量
第1問(評論)は、本文が昨年度と比べ200字程度減少した。また、設問数は同じだが、マーク数が1つ減少した。第2問(小説)は、本文量・設問数・マーク数ともに昨年と同じ。第3問(古文)の本文は600字程度の減少。設問数・マーク数は昨年と同じ。第4問(漢文)は、本文量が215字で7字増加。設問数は昨年より1問増加。マーク数は昨年と同じ。

出題傾向分析<現代文>第1問(評論)は、昨年度の鷲田清一にひきつづき、現代文入試では頻出している筆者からの出題であった。第2問(小説)は、井伏鱒二の短篇からの出題。本文に直接描かれていない登場人物の内面を問う問題もあったが、一方で、本文の部分的読解ができれば正解を選べる問題が多かった。<古文>江戸の随筆からの出題。陸奥の鷹飼いが書道を学ぶために上京した時のいきさつと、陸奥に戻った後に防人に任命された時のことを、作者自身が鷹飼いになりかわって詠んだ歌を交えて描いている。昨年と違って本文に和歌が三首あり、それぞれの和歌について、その内容や表現が問われた。昨年と同様、文章全体の表現に関する設問が出題された。<漢文>讒言によって流刑に処せられた蘇軾が、判決当時の裁判官に出会った際に、冥界での裁判の話を使ってからかい、皮肉を言った話。ストーリーの展開を捉えることは難しくないが、流刑地の名と同音の字を用いてのユーモアに気づくかどうかがポイントである。選択肢には紛らわしいものはほとんどない。



代ゼミ

古文で和歌問題が復活。本文量は全体的に減少。
古文は問題本文の分量が減少。現代文は小説問題で出題意図が汲み取りにくい設問がみられた。全体的にはやや易化したと思われる。
昨年度との比較<難易度>やや易化<出題量>ほぼ昨年並<出題内容>古文は和歌3首を含む文章からの出題
第1問(現代文・評論)は、木村敏「境界としての自己」の一節。本文は抽象的、観念的な表現が多く、読み取りが難しかったと思われる。本文の論理的なつながりが正確にたどれないと、誤りの選択肢に引っかかってしまうおそれもある。問6が、昨年の「文章の表現」を問う設問から、以前の定番であった「論の展開」を問う設問に戻った。
第2問(現代文・小説)は、井伏鱒二「たま虫を見る」の全文。井伏の文章は過去にも出題されたことがある(89年センター本試「朽助のいる谷間」)。今回の文章は、読解自体はさほど困難ではないが、出題意図がつかみづらく、消去法に頼らなければ答えが出しにくい問題も見られた。問6は2つ目の答えが選びにくい。
第3問(古文)は、江戸の女流文学者の手になる『真葛がはら』の一節で、本文は昨年よりも大幅に短くなり、和歌を含むものの読みやすい文章。設問構成は昨年と同様。和歌問題が復活し、問6では、昨年に続き、内容に加え「表現の特徴」も併せて問われた。文法問題は昨年並の基本的なものであった。全体的に紛らわしい選択肢もなく標準的な問題。
第4問(漢文)は、孫宗鑑『西よ(「余」の下に「田」)瑣録』から。初めて問7まで設問が作られているが、小問数は昨年度と同じで、大きな変化とは言えない。本文全体の文意を取るのは難しいが、問題そのものは標準的であると言える。問7は全文の理解を一挙に問う問題になっている。



<東進>


現代文は文章量、マーク数ともに減少した。古文は本文が昨年と比べて大幅に短くなった。漢文の設問数が1題増え7問になった。 

大問数4題、各大問の配点50点。解答数は1つ減って36になった。

「評論文」は、個体および集団における自他の境界と自己意識についての考察文で、昨年よりもやや文章量が少なくなっている。内容的には頻出テーマの自己存在に関するもの。問1の漢字が昨年に引き続きやや難しいが、問2〜問5までは基本〜標準レベルの傍線問題。特に「指示語」に絡む問題が複数出されたことが特徴といえる。問6はここ2年(i)(ii)に分かれていたが、今年は内容合致のみであり、マーク数も1つに減った。総合的には昨年並み。「小説文」は井伏鱒二「たま虫を見る」。昨年より文章量がやや減っているが、主人公「私」のいろいろな時代の境遇を「たま虫」に投影する形で書かれており、その状況下での主人公の心情をうまく汲み取れるかどうかが勝負の分かれ目になった。昨年出された問5の「傍線のない問題」は出題されず、すべての問いが例年通りの設問形式、内容であった。全体的に見て、センター小説の平均的な設問が並んでおり、難易度も昨年並みといえる。「古文」は本文量が昨年の三分の二になったが、必修単語・文法に依ると同時に、漢字の当て方や前後の脈略も見て解く必要がある。「漢文」は逸話的な文章で易化。設問数が7になり、空欄補充問題が昨年に続いて出題された。問1の意味の問題は4年連続であった。

国語全体としては、易化。